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2004.11.10

ディナモ

ディナモ ナチスに消されたフットボーラー』読了。プロローグは静かに、そして本編では、丹念に検証された出来事が整った文章で著されている。戦争がはじまり、静かなプロローグから一転してそれからの無惨な日々もまた、声をださない本から地にねむっている人々の屍が見えるかのように、形容詞の少ない文章が続く。ウクライナ・サッカーがどのようにはじまったか、ディナモ・キエフがどのように名声を勝ち得ていったか。選手らのすばらしい活躍のあとに続く、戦争という拷問には息をつめて読んだ。かつての名選手たちは、いまやパン工場で働く強制労働者となり、それでも中庭で練習することは許された。ヒトラー政権下の生活の質の向上の例として(本文より)ドイツ軍はスポーツの世界に干渉しはじめた。パン工場で働く元ディナモ・キエフのメンバーはFCスタートというチーム名で、チャンピオンシップに参加することになる。ドイツ側が栄養たっぷりの若くて壮健な選手ばかりなのに対して、FCスタートは24時間シフトに組み込まれて働いている労働者ばかり、栄養とて充分には取っていない選手たち。チャンピオンシップの初試合は、FCスタートの圧勝だった。肉体的なコンディションの不利を、FCスタートは圧倒的な能力で退けた。そしてその試合後、ドイツ側は「真の愛国者は戦争の捕虜との交流を望まないという理由」で、スタジアムの立ち入りを禁じる。それでもその後のどの試合においても、FCスタートは勝ち続けた。ドイツが喜ぶはずはない。こうして「死の試合」へと刻々と近づいていった。「フィツカルト・ウラー」と宣誓した試合がはじまり、「許されざる勝利」を得たFCスタート。選手たちはそれぞれの拷問の場にじわりじわりと送り込まれていった。キエフ奪還されたその後までも、「死の試合」伝説がおさまったわけではないのだ。

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コメント

hanemiさん、
感想のような文章は書けない読後感でしたね。拷問の場面はただその描写があるのみで、ぐっと息がつまります。訳者あとがきでも、「本書を訳してすっかりウクライナに肩入れしている」と書かれていますが、ほんと、ウクライナの今のサッカーをみてみたくなりました。ワールドカップ、次は2006年ですね。

こんにちは。
この本、ずっと前から読みたくてたまらない!本です。レビューを読みながら、興奮してしまいました。
いくら待っても図書館には来ないみたいなので、もう、買ってしまおう(最近、図書券をもらう機会がいろいろ……。事務員募集に応募した近所の開業医から、お断りの通知に、500円の図書券が複数同封されていたのには、びっくり。やはり、もうかるのか?)。
ちなみに、ディナモ・キエフは、80年代後半に輝かしい活躍をしますが、その後のソビエト崩壊や有力選手の西側諸国移籍などで、衰退していきました。ちょっと悲しい記憶です。

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