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2005.12.15

ディスレクシア

オンライン書店ビーケーワン:9番教室のなぞ

 2002年度カーネギー賞ロングリスト作品、ジュリア・ジャーマンの『幽霊(ゴースト)からのメッセージ 9番教室のなぞ』(ふなとよし子訳 松柏社)を読みました。ディスレクシアの少年、フランキーが主人公。読み書き困難を伴うこの障害は、学校でもなかなか理解できず、母親はフランキーを守るためよりよい学校を求めて転校を繰り返します。新しい学校は、フランキーによい体制をつくり支援していきたいと母親に約束するのですが、理解のある先生が1週間ほど怪我で入院することになり、代わりの先生がフランキーのクラスにつくことに。案の定、フランキーはただの頭の悪い子、努力のしない子とその先生から冷たい仕打ちを受け……。
 学校にはつきものの幽霊物語がこの話のもうひとつの伏線です。ディスレクシアだからこそ、幽霊物語の深層をつかむことができる。フランキーはどうやってその幽霊のなぞにたどりつけるのでしょう。

 脳機能の中ででも聴覚障害や視覚記憶など、読み書きのための情報処理機能がうまく働かず、その結果として、読みや文字の形、スペリングなどの学習が難しくなると考えられています。今日、このディスレクシアは、学習障害(LD)の読字障害のひとつとして、LDの中心をなすものです。

 解説・推薦を書かれた東京学芸大学の小池教授が、巻末にこのようにディスレクシアについて説明しています。

 エイダン・チェインバーズがいうように、物語はメッセージのためにあるのではありません。フランキーの物語もまずフランキーありきです。ミステリ仕立ての緊張感がリアリティもって伝わってきて、読者をひっぱります。ジュリア・ジャーマンの作品で邦訳されたものに『ハングマンゲーム』(橋本 知香訳 偕成社)があり、こちらもいじめをテーマに物語そのものを読ませますが、この作者はほんとうに優れたリアリズムの紡ぎ手だと思います。

 さて、この本よかった!と別の場所で書いたところ、すぐさま本読みの友人が「『タトゥーママ』(ジャクリーン・ウィルソン作 小竹由美子訳 偕成社)の主人公もディレクシアだったよね」とコメントをくれました。昨晩読み返してみると、確かに。なるほど、この主人公ドルフィンは絵を描く才能に秀でているのですが、『9番教室のなぞ』を読んでとても納得できました。上述の小池教授も「ディスレクシアの子どもには並外れた才能が隠れている場合が多いようです」と書かれています。ウィルソンもうまくすくいとって物語を紡いでいて、思いがけない楽しい再読でした。

 そしてそして昨日発表されたネスレ子どもの本賞でも、9歳から11歳のカテゴリーで金賞をとった作品 "I, Coriander" の作者、Sally Gardner もディスレクシアです。自分の名前もどうしても綴ることができず、いまのSallyに改名したという Gardner。舞台芸術の仕事をしながら、絵本も描いてきた彼女がはじめて挿画も文章もひとりでつくった物語で、今回金賞を受賞したのです。現在53歳の Gardner は子ども時代、やはり上で紹介した物語のフランキーのように、いやな思いをたくさんしたそうです。しかし、Guardian 誌の記事によるとこの物語もまた、作者ならではの視点で世界をみせてくれるおもしろいものになっているようで、読んでみたくなりました。marginalia さんのブログでポストされている記事もおすすめ。

 ネスレ子どもの本賞の受賞作リストはやまねこ翻訳クラブサイト(海外児童文学賞の速報)からどうぞ。

                                
オンライン書店ビーケーワン:タトゥーママオンライン書店ビーケーワン:ハングマン・ゲーム

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コメント

象形文字! 『9番教室のなぞ』でも、フランキーが見える文字が書かれていて、何かに似てるなぁと思ったんです。なるほど。
『タトゥーママ』を久しぶりに再読して、多面的な物語だなぁと堪能しました。ママのネグレクトぶりは痛々しいのだけど、ドルのけなげさにもあらためて思いを馳せました。

そうそう!ドルがこのディスレクシアなんですよね。これでこの難しい英単語を覚えました。欧米で、ディスレクシアの子供に漢字を導入してみたら成果があがった、という話をどこかで読んだことがあります。象形文字だからだそうです。

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