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2006.01.10

13年ごしの読了

ある家族の会話
ナタリア・ギンズブルグ〔著〕 / 須賀 敦子訳
 



 昨年の暮れに、いつも読みかけの本ってあるよねという話題がある場所で出た。私にとってはこの本がそれで、13年前ほど単行本を購入してからいつも最初の30ページ弱で、なんとなく充足されて続きを読んでいなかった。しかし、その30ページほどは何度も読み返し、そのあたりにでてくる、父親の「ぶざまなことをするなっ!」「行事知らず」「愚かもの」などと言う姿を読んで、あぁまたこの人に会えたと安心していたのだ。

 暮れからの風邪を雪づかれ(?)からぶり返し、まったく同じ症状を繰り返している。のどがはれてその痛みで夜眠れない、ごはんものどを通すのがつらい、くぅぅという症状。昨晩もその痛みでなかなか眠れず、えいやっと起きて本を読み始めた。ストーブをつけなおし、あったかい格好をし、ホットワインをつくり、読書の準備をして読み始めた。

 つらなる家族の会話は、それ自体で父親、母親、きょうだいらの人となりを浮かび上がらせ、隣の部屋でその会話を聞いているかのような臨場感。そしてそこに時間を重ねることで見えるささやかな光、それは最後にやってきた。著者の自伝的小説といわれる本書のまえがきで、「自分についてはあまり書きたくなかった」とことわりをいれてもなお、さらりと書かれたその自分のところで、父親の愛情がより深く感じられ、あぁ今回ここまで読めてよかったと思えた。本は読める時がその「時」だとあらためて感じ入る。

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覚え書き」カテゴリの記事

コメント

そう、どの作品もピンと立っていますよね。残酷さ、哀切さも含めて。
http://d.hatena.ne.jp/erohen/20051225
でも書かれていますが、内面を書いていないというところは、私の感じるセンチメンタルじゃないってことかなと。

『浅茅が宿』も読み返しました。働きすぎているのは、決して本人たちのせいではないのに、でも、個別の感情におぼれることなく書かれているおかげで、より孤独と寂しさと切なさがぐぐっとこみあげてきます。
すごい短篇集ですね。

橋本さんが、『できごとを文章に変質させる手法をもたれている作家』というのは、まさにそのとおりですね!クリッシェな言い方ではありますが、『珠玉の短編集』だと思いました。どれをとっても完成度が高くて。ごくフツーに綴られていながら橋本さんにしか書けない作品世界ですよね。私はまず表題に惹かれて『浅茅が宿』を読んで(ここ数年、仕事が忙しくなる一方の夫が家にいる時間がどんどん短くなり、家や家族に目を向ける余裕もあまりなくなって、時にふてくされて、これじゃ『浅茅が宿』じゃん、なんて思ったりしていたもんですから)胸にぐさっと突き刺さるものがあり、次に『ふらんだーすの犬』を読んで、あまりの哀切さにがーんと打ちのめされ、そうそう、私も一晩おいてからまた読み始めたのでした。特に忘れられない一編です。

わぁ、うれしい偶然です。
ちなみに『蝶のゆくえ』は、昨年に読んでいてとても衝撃を受け、言葉にうまくできないまま、昨晩あたり書けそうかなぁと思っていたところなんです。うれしい共時性、るるん♪

私も橋本さんの小説家としての実力をしみじみと感じました。すばらしいですね。虐待される子どもを書いたものはいくつも読んでいるけれど、感情に埋没することなく、情景の輪郭がしっかりしていて、ぞくりとしました。本当にこのぞくりが恐かった。最初の短編読んで、しばらく時間を置いてから次の作品を読みました。

先日、毎日新聞で養老さんと橋本さんが対談されていて、橋本さんは小説家になりたくてずっと書いていて、ようやく小説を書けるうようになってきたというような事を話されていました。編み物も、最初は下手だと言われていたけれど、やっているうちに編み目もそろってきたし、とも(笑)。多才な橋本さんですが、目標は小説だったのかと。そして、『蝶のゆくえ』でまさに小説を書かれているのだなぁと思いました。ほんとにすごい作品でした。

『ある家族の会話』の訳者あとがきで、須賀敦子さんが「(ギンズブルグ)は、記憶を文章に変質させるにあたっての、手法の秘密のようなものを教えてくれたように思う」と書かれているのですが、橋本さんもまた、できごとを文章を変質させる手法をもたれている作家だと思いました。

わあ、なんたる偶然!わたしも『ある家族の会話』、ずっと読みきれてない本、なんですよ! なんか、そういうところがある本なのかもしれません。齧っただけで充足できてしまうような。でも、さかなさんのおかげで、なんだか読み通したくなってきました。
本を読む「時」があるって本当ですね。無理して読まなくても、ある時本に呼ばれるようにしてするっと読んでしまう。そんなふうにして読んだ本はしっかり心に残ります。
ずっと積読になっていた『蝶のゆくえ』を先日読んだのですが、橋本さん、なんてうまいんだろう!とつくづく思いました。親の自覚がない若い母親に虐待される子供、仕事人間だった夫に死なれてみて愛を思い出す妻、田舎の母の老いと向き合う都会暮らしの娘、『今』を生きるいろんな人の生、それに時代がくっきりと描かれていて、久々にいい短編集を読んだ思いがしました。さなかさんは読まれました?

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