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2006.09.20

キッチンで読了

サフラン・キッチン
ヤスミン・クラウザー著 / 小竹 由美子訳

 青の色あいが美しい表紙――。新潮社クレスト・ブックスの新刊は、イラン系英国人作家によるデビュー長編。子どもたちを寝かしたあと、台所にもどりお茶を飲みながら、いっきに読了した。  

 マリアムはイランで生まれたが、ある出来事を境にイギリスに渡り、そこで結婚し娘も授かる。その娘も大人になったときに、またも大きなことがおこり、イランに、故郷に戻ることになった。イランを離れて長く年月がすぎているにもかかわらず、マリアムの胸中にうかんだものは……。

 心のひだを細かく深く描き、マリアムの複雑な行為すらも納得できる。
 悪いことからよいことが生まれる――というアリの言葉も、アリが言うからこその響きをもつ。生まれ育った土地の文化は、根っこになる。その土地を離れて暮らすということは、その根をまた別のところに移し替えること。植え替えがうまくいくかどうかは、なににかかってくるのだろう。それでも、なじみれきれないものとは、どう折り合いをつけていけばいいのだろう。正しい回答などないその問いを抱えつづける強さがこの物語にはある。

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コメント

こちらこそ、すばらしい日本語でこの小説を読ませてくださったことに大感謝です。もろもろ喚起させられました、ほんとに。

いつもながら、さかなさんの読みは、物語のひだのなかまで丁寧に読み込んでくださって、こういう読者と出会えると、本も幸せだなあと思います。本に代わって、感謝!です。

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