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2006.11.26

たそかれ

たそかれ
たそかれ

朽木 祥作 / 山内 ふじ江画
福音館書店 (2006.11)

たそかれは黄昏のこと。

夕暮れどき。薄暮のなかで、かれはだれか見分け難くて「誰そ彼」と問うとき、の意。たそがれどき。古くは、「かはたれ」とも呼ばれた。

 散在ガ池でひとりさみしく暮らしていた河童の八寸が、猫に姿を変え、麻という少女とわずかな期間暮らしたことがあります。その物語は前作『かはたれ』に書かれていました。続く『たそかれ』に、もちろん、八寸も麻も出てきて、読者は近しさを感じますが、この物語はまた別の流れがあります。名前は「不知」という月読みの一族の賢い河童。
 無事、池にもどった八寸はうれしい再会を経て、また人間の世界に戻ります。いえ、戻るというよりは、長老から依頼を受け、不知と一緒に池に戻る説得をするために。なぜ、不知は池に帰ろうとしないのか。学校のプールを住処とし動こうとしないのか。その背景となる物語の語り口は、静かで美しく、しかし語られることは厳しく残酷なもの。最初はぼんやりとしかわからなかったものの焦点が少しずつ定まった時、ぎゅっと心がつかまれた気がしました。これは忘れてはいけないことなのだと。

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コメント

ERIさん

ファンタジー読本も、こちらも読んでくださってありがとうございます。ERIさんの文章も読ませていただきました。

他者への視線を取り戻すことの困難さを引き受けつつ、その先にある喜びを『かはたれ』で描き、『たそかれ』では強いメッセージをしかと受け止めるべき真摯な気持ちをもたらせてくれました。私もこの本を読めたのは今年のうれしいことです。

「大人のファンタジー読本」の「かはたれ」の項を読ませていただきました。深い悲しみに沈む自分から、他者への視線を取り戻すこと・・。この不思議さと再生を美しく書くこのシリーズが大好きです。不知の思いの深さと悲しみが銀の雫のように沁みこんできましたね。朽木さんのこの物語と知り合えたことは、私の今年一番の収穫です。

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» たそかれ 不知の物語  朽木祥 福音館書店 [おいしい本箱Diary]
前作「かはたれ」に続く、河童と人間の紡ぐ愛と信頼の物語。 泣きました。自分でも、おかしいくらいに。 読み進めるうちに、どんどん自分の中から涙があふれて止まらなくなり、 ほんと大洪水になってしまった。それは自分の涙であって、自分の涙で ないような感じ。銀色の美しい河童の住んでいた淵の底からあふれて くるような、何かでした。読み終わったあと、その涙に洗われたように 心がしんとして、美しい月の光が差し込んでくるような思いがいたしました。 月読の河童の霊力が私にも降り注いだのかもしれ...... [続きを読む]

» 『たそかれ』 [会社ともおの読書日記]
『たそかれ』 著 者:朽木祥 出版社:福音館書店 発行月:2006年 11月 ふ [続きを読む]

» 『たそかれ』 [t-mitsuno's blog]
『たそかれ』  朽木祥さんの新作、『たそかれ』。本がとどいて冒頭の数行を読んだだ [続きを読む]

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