
ルイス・サッカーの名作『穴』が文庫化。単行本で刊行された時に夢中になって読んだ本をあらためて再読する。読み出すと止まらない、物語のもつ、めくるめく展開。昔話の語りのように、あっさりとコクのある口調でスタンリーの活躍が読めるのは、なんて楽しい!
本当にことを言っているのに、それは嘘だと決めつけられ、少年達の矯正キャンプに送り込まれてしまうスタンリー。キャンプ施設では何をやってここに入ったんだという質問に、嘘の答えを言うが、それも本気にはしてもらえない。本当の事を言っても、嘘を言ってもどちらもダメ。そしてキャンプ場でやらされることは、ひたすら穴掘り。
「毎日ひとつ穴を掘る。土日もだ。穴は筒状。大きさは、直径1.5メートル、深さ1.5メートル。シャベルが物差しがわりになる。」
言われたとおり、掘って掘って掘った。スタンリーは穴掘りしながら何を得ていくのだろう。
スタンリーの父さんと母さんがどうやって知り合ったかという、ささやかで大事な話がきれいに物語にとけあっている。スタンリーのキャンプ話と並行して語られる物語はどれもそれひとつで独立して楽しめるほど完成されている。それらが、でこぼこせずに、どの話ともつながり、ぴたっと着地するラストがすばらしい。おもしろい物語というのは、こういう風に書かれたもの。こういう風がどんな風かはぜひ読んでみて。文庫本、税込み620円です。
『穴』の文庫本表紙は、単行本と同じく出久根育さんによるもの。単行本とはちょっと変わってます。
帯に掲載されていた、うれしい新刊お知らせと共に『穴』ワールドをさらに楽しめる2冊を。
『道 ROAD』(幸田敦子訳)+"SMALL STEPS"(邦題未定)2007年初夏単行本刊行予定 (金原瑞人・西田登訳)
前者は、『穴』に登場するスタンリーによる人生サバイバルガイド。
後者はキャンプでスタンリーと同じ班だった〈脇の下〉のその後を描くいたもの。〈X線〉も登場するらしい。


ところで、翻訳者の幸田敦子さんが訳されたものはどれも素敵なのですが、幼年ものでおすすめは『わんぱくピート』(あかね書房)。4歳の少年ピートの、毎日がピカピカ光っています。とうとう、わが家の一番ちびちゃんもピートの年を越えてしまいました。

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