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2007.06.28

最強の天使

最強の天使
まはら 三桃著

 小栗周一郎、通称クリショーは母親が経営するマロン美容室の看板少年。心惹かれる後輩の志帆に伝えなくてはいけないことを、すっとうまく言えなくてもやもやしている時に、なんだかまわりがにぎやかになってきた。家出した父親の父親、クリショーの大嫌いなじいさんが会いたいと手紙を書いてきたり、同性の後輩からも意味深な手紙を受け取る。タイトルの最強の天使とはだれぞや?

 前作『カラフルな闇』で登場した志帆を覚えているだろうか、そしてクリショーもこの本の時から登場していることを。『カラフル~』では志帆の視点で描き、本作ではクリショーが中心にうごく。大きな展開をみせるわけではなく、クリショーの日常がなんてことはなく綴られていくのだけど、ひねくれもののじいさんが随所に存在感をあらわし、非日常の味付けをしてくれる。父親がいない生活になってから9年後が描かれているので、家族が欠けた悲壮感も薄れている。けれど、いなくなった人の存在はしっかりある。じいさんと9年会っていなくても、じいさんであり、いなくなった父親もどこかに生きている。

 なんていったらいいのだろう。読んでいて、どんどんいい気持ちになった。クリショーのもやもやも、じいさんの偏屈ぶりも、人間らしく、愛おしく。最強の意味がわかると、なお。

 創作ものは、「あとがき」がないことが多いけれど、まはらさんの作品はどちらにもついている。あったかく作品を送り出す気持ちが、短い文章ににじみでていて、これまたいい気持ちになるのだ。私は子どもの頃、本の最初に引用されている言葉を読むのが好きだった。物語にこめた祈りを凝縮したような言霊を感じていたのだと思う。まはらさんの「あとがき」を読んで、子どもの頃に読んだ本を思いだした。大げさかもしれないが生きていく勇気をもらえたし、支えになった。大人が本気で子どものことを思って、物語を書いてくれているんだとびっくりもした。『最強の天使』を、そう思って読んでくれる子どもがひとりでも多くいますように。

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