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2008.01.11

彼岸花はきつねのかんざし

彼岸花はきつねのかんざし
 朽木祥・作 ささめやゆき・絵 学研
 ISBN 978-4-05-202896-0
 定価 1200円+税

『かはたれ』、『たそかれ』の作者、朽木氏の新作読み物が出た。今度はどんな物語を紡いでくれたのか。胸がはやった。

帯にはこう書いてある。

「あたし、わりあい化かすのがうまいんだよ。」と、子ぎつねはいった。
かけがえのない日々をうばったのは、一発の大きな爆弾だった……。

 戦争の物語なのだ。ちょっと肩に力が入る。どんな風に語られるのか、と。しかし、読み始めると、日常とファンタジーとのゆるやかな境界での語り口に、心はすっと物語に入っていく。

 也子(かのこ)の家の裏には竹やぶがあって、おばあちゃんは、おきつねさんに、しょっちゅう化かされている。お母さんは、子どもの頃よく化かされていたが、大人になってからは大丈夫だという。也子は、おばあちゃんや、お母さん、ねえやん、男衆のコウさんから、いろんな竹やぶでのできごとを聞いていた。そうしたら、ある日、子ぎつねにであう。「あたしは、まだ、おきつねさんとは、とうてい、いえない。」、そう自分のことをいう子ぎつねに。
 おきつねさんときつねさんは、どう違う? 子ぎつねは也子に「あんた、あたしに化かされたい?」と聞いてきた。

 あっというまに、きつねのいる世界と人間の住む世界がつながって、自然に物語は展開し、おきつねさんにも、きつねさんにも近しさを感じて、楽しくなってくる。でも、戦争が消えたわけではない。戦時下での物語、也子の住むところにピカドンが落ちる、ある刹那に――。

 朽木氏の筆致は、いつの時でも声高ではない。静かに、ほがからに物語を紡ぎつつ、被爆二世の作者は同じ土俵で厳しく冷たい戦を書く。おそらく、祈りをこめて。読んで受けとめるのは私だ。作者があとがきで書いた「子どもが子どもらしく生きることのできる日々」をつくるのも大人の私なのだ。

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コメント

びわさん

コメントありがとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

ささめやさんの挿画もすばらしく、心ふるえる出会いの一冊でした。朽木さんの筆致は美しく力強く、戦のない世界、戦によっておこる世界を巧みに描いていました。戦争を伝えるひとつの物語になると確信しています。

伝えるということは簡単ではないです。言葉で伝える難しさに対してひとつの提案がなされた物語でもあると思いました。

本年もよろしくお願いいたします。

昨年12月に出ると聞いていた新刊の年内出版を確認できなかったので、どうなっていることかと気にしていました。
とても良い内容のようで楽しみです。

朽木さんは戦争というテーマを扱いたいがために、書くことに意欲的に取り組んでいるようです。
つい先ごろ、恩師と手紙でのやりとりで、ドイツは戦争という負の遺産を若い世代へ受け継いでいくことが教育のなかでシステマティックになされていそうだが、日本はそれが課題ということを書きました。昨年の沖縄戦の教科書記載問題でも、その点がクローズアップされましたが……。
このような読み物が出ることは、いずれ教材としての広がりも期待できます。質を落とすことなく、良い作品を書きつづけていってほしい方ですよね。

空さん

ほんとうに、すばらしい作品でした。空さんにも是非読んでいただきたいです。
仰るように、“上質で深みと味わい”のある文章で、なおかつ、子どもに伝わる言葉で書かれているのです。

「かはたれ」も、「たそかれ」も、さかなさんに教えていただいて、とても楽しませていただきました。上質の、ほんとうに深みと味わいのある文章で読者に語りかけることのできる方だなあと、感心しながら読みました。
これも、ぜひとも読まなくちゃ!
『語りついでゆきたいもの』をしっかりと持っていらして、しかもそれを見事に物語りに織り込んで、品格のある柔らかな口調で語られる。これからも、どんなものを書いていかれるのか、楽しみです。

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