« 日和 | トップページ | 気になる新刊 »

2008.03.03

エレクトラ―中上健次の生涯

エレクトラ―中上健次の生涯  

 ごつごつして、なかなか読み進められなかった。もう最後まで読めないかなと投げ出しかけたのだけれど、風邪をひいて布団の中にいる時に読み始めたら、カチリとはまった。一作も読んだことのない中上健次の生涯を書いた評伝に興味をもったのは、「考える人」の編集長が発行しているメールマガジンでとりあげていたからだ。[Link]
 被差別部落の出自をもつということも、この本で初めて知ったことであり、妻も娘も作家になっていることも初めて知った。つまり、何の先入観もない作家の評伝だったのだが、作家であることが自分(中上)であることである――それが伝わってきた。
 不幸は経験しなくていいのであればそれにこしたことはない。まして、出自など、自分で選べる術もない。いつも思うが買わなくていい不幸が一般的なのだ。重たいものをいくつも抱えて生きてきたものを、書く、小説にする、詩にしていくことができたのは、幸福だったのだろうか。
 出会った編集者たちが中上の書き手としての道筋をつくっていく。自分が編集者じゃないほうがのびのび書いていけるのではと判断した編集者もいるが、彼がいたから、その先に書けた作家がいたのだろうと思えた。中上と共に伴走した編集者も強い印象を残す。芥川賞を獲るかどうかでは、まるでミステリのクライマックスを読むようだった。
 個人的にはあとがきに引用された手紙も、本文にいれてほしかった。
 手紙というのは、やっかいに心にひっかかる。

« 日和 | トップページ | 気になる新刊 »

」カテゴリの記事

コメント

空さん、

ぜひぜひ。きっと琴線にふれると思います。作家の業と家庭生活やら、夫として父親として、と様々な面を書きつつ、この人は何より作家だったのだと思いました。あと、編集者の仕事についても、いろいろ読めるところがあったり、河出書房新社の歴史も読めたりと、たっぷりのボリュームでした。

おー。「エレクトラ」読まれたのですね。これは、読まなくちゃ、と思ってる本なのですが。中上さん、わたしもあんまりいい読者ではなくて、ちょろっとしか読んでないんですが、いらっしゃらなくなってからもなにかと気になっている作家ではあります。『路地』に軸足を置き、アタマではなくカラダで書いている、際立ってユニークな巨人、という印象を漠然と持っているんですが。。。。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/9198/40361672

この記事へのトラックバック一覧です: エレクトラ―中上健次の生涯:

« 日和 | トップページ | 気になる新刊 »

2017年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

Google



  • ウェブ全体から検索
    ココログ全体から検索
    1day1book内検索