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2008.09.21

『縞模様のパジャマの少年』――フェンスのむこう側とこちら側

 1971年生まれのアイルランド作家。本作がジョン・ボイン[作者公式サイトLink]にとっては4作目で30か国以上で翻訳出版され、マーク・ハーマン監督により映画化[公式サイト]もされた。

 点が染みになり、染みがかたまりになり、
 かたまりは人影になり、人影は少年になった

 ブルーノはベルリンで裕福に楽しく暮らしていた。親友3人がいて、家は探検できるほど広く、お姉さんはサイアクなものの、お父さんもお母さんも大好きで幸福な家族。しかし、ソートーさまをディナーのおよびした次の日から、生活に大きな変化がおきる。ブルーノは大好きな家を離れ、いままでと比べると狭い家にうつることになる。そこは、まわりに子どもはひとりも住んでいないところだった。いったいこれからどうやって毎日を過ごすのだろうとブルーノはがっかりする。
 しかし、早く元の家に戻りたい、そう思っていた日々も、それがかなわないとなると、それなりに環境にかじんでいくブルーノ。ある日、楽しみを見つけるために探検をすることにした。目的は家からみえるフェンス。そこのむこう側にはどうも人がいっぱいいるように見える。
 どんぴしゃり。ブルーノは探検で男の子を発見する。偶然にも同じ誕生日のシュムエルを――。

 9歳のブルーノは、ベルリンでただ幸福に生きていた少年だった。裕福であることにも無自覚で、世の中のできごともまだよく理解していない。そのブルーノを主人公に、物語は淡々と語られる。歴史を知っている読み手にはまどろっこしく、はらはらするほどに。
 フェンスごしの友情がどんな形を迎えるのか。ひたすらしずかに物語は進行していき、ラストには、もう声を失ってしまう。

 訳者あとがきにも書かれてますが、歴史を知っているとこの設定はありえない。けれど、つよくリアルにせまってくる、ナチス、ヒトラー、アウシュビッツ収容所。作者は70年代生まれ。描いた収容所の世界に、このラストに、私はこれから本の表紙を見るたびにひやっとした気持ちを思い出す。

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コメント

NONさんは原書で読まれたのですね。
邦訳、とてもよかったです。
映像はきっとすばらしいのだろうと思いつつ、このラストを映像で印象づけられるのが怖いような……。

これを人にすすめる時にあらすじの詳細は言えませんね。とにかく読んでとしか。

なんともいえないラストですよね。忘れられないとしか言いようがないような。
ソートー様ですか、なるほど。ということは、あのあたりはああなのかな……。邦訳読むのが楽しみです。
それで、シュムエルがどのあたりまで知っていたのか、どこからがうそなのかなんてことを考えてみたいです。いや、最後まで本当という可能性もふくめて。

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