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2009.07.12

とびらをあければ 魔法の時間


とびらをあければ魔法の時間  新・童話の海
 朽木祥 作 高橋和枝 絵 ポプラ社

 習い事をしていると、楽しいときもあるけれど、それ以上に、思ったようにいかなくて、気持ちが重たくなることもあります。この物語の主人公の「わたし」は、バイオリンを習っています。でもここ2か月はずっと同じ曲に手こずっていました。花丸も丸ももらえない、メヌエット。だからレッスンのある水曜日、今日もまたあのメヌエットとつきあうのかと思うと、「わたし」は降りるつもりのない駅で降りてしまいます。
 知らない駅で降り、歩いていると「すずめ色堂」という不思議な名前の建物が目に入ってきました。そこには〈ためらいは、いりません。すずめいろどきです。中へどうぞ〉――、そう書いてあります。書かれてあるとおり、中に入っていくとそこには、たくさんの本と……。

 朽木さんの物語は、読み手の私に新しい言葉を教えてくれます。最初に出合った『かはたれ』では、夜明け方の薄明を、かれはだれか見分け難いときの意だということ、「彼は誰(かはたれ)」の言葉を教えてもらい、その言葉をもって物語に入り込む楽しさ、うれしさをあじあわせてくれました。この本では「雀色時(すずめいろどき」という言葉に出会いました。「日ぐれまえの、空気の色までちがってくるような、ふしぎな時間」、その時間にだけ開いている「すずめ色堂」で「わたし」は部屋いっぱいの本、不思議な陶製の犬やスズメ。何がおこってもなっとくしてしまうような、その空間で、「わたし」はバイオリンにたいして頑なになっていた心が少しずつほぐれていきます。そのほぐされ方のすてきなこと。

 読み終わったとき、読み手の私は、物語の「わたし」のような気持ちをわけあいました。

 〈☆(ほし)のように、いそがず、〉〈☆(ほし)のように、やすまず〉

 この言葉も心に残りました。ドイツの詩人、ゲーテの言葉だそうです。

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コメント

Lotta さん

はじめまして、コメントありがとうございます。
この物語、日常からつづくファンタジーとして、近しみを感じるやわらかいお話でした。イラストもとても効果的に挿入されていて、おすすめです。

過去の記事も読んでくださり、かさねてありがとうございます!

はじめまして。少し前から、こちらのブログ読ませていただいています。
ご紹介の本、表紙も素敵で面白そうですね。
他にも読みたくなる本がたくさん紹介されていて、過去の記事も楽しく読ませていただいています。


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