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2009.10.16

マルベリーボーイズ

Napoli
マルベリーボーイズ』 ドナ・ジョー・ナポリ

相山夏奏訳
偕成社
ISBN 978-4-03-756770-4
定価 1680円(税込)

まったくの前知識なしに読み始めた本でした。ドナ・ジョー・ナポリといえば、「シンデレラ」や「ヘンゼルとグレーテル」といった作品をオリジナルな視点で再話する、そのストーリーテラーはすばらしくいつも感嘆していました。ですから、今回の作品もその流れにあるものではないだろうかと勝手に思っていました。

そして、それはうれしく裏切られました。

おもしろい本のにおいがしました。このカンはたいていハズレがありません。今回もそうです。

本書は著者ドナ・ジョー・ナポリの祖父をモデルにしています。とはいえ、祖父や両親から直接聞いた話はわずかであり、ふくらませたエピソードは歴史に関する本や、雑誌、新聞、写真を自らの足で得てきたものからきているそうです。

その祖父(父方)はわずか5歳の時にイタリアからアメリカに密航したそうです。生まれた時から父親がいなく、アメリカに渡ってから若いときにビジネスマンとして成功したと、ドナ・ジョー・ナポリは聞いたそうです。

物語では9歳のドムがアメリカに渡る船に密航するところからはじまります。母親と一緒に船に乗ったと思いきや、実はたった一人だったことをなかなか受け入れることができません。それでも彼はアメリカの地に足を踏み入れます。母さんからの贈り物の新品の靴を履いて……。

ドムがどんな風にアメリカで生きながらえていくかは強い吸引力があり、途中でページを閉じる気持ちをまったくおこさせません。だれと出会い、どんなことを体験していくか。なんと、タフな子ども時代だったのか。

守ってくれる大人のいない子どもが、商売の才能にめざめてお金をため、生き抜いていく。人のもっているそのおおきな力に心を強くうごかされました。これはドナ・ジョー・ナポリの創作ではありますが、実際にこういう子どもたちが存在した、その確かな存在感が物語の随所に感じられ圧倒されます。

最後にだいすきな文章を引用します。ドムはこんな風に、近くにはいない、けれどずっと近くにいた大人たちの愛情で育っていったのです。

 ぼくはオレンジを積んだ。家でおばあちゃんの毛糸玉を積みあげていた要領で、注意ぶかく、ひとつも落ちてころがったりしないように。ぼくを見つめて、つぶやくおばあちゃんの姿が心にうかぶ。おばあちゃんはよくいってた。「なにごとも見た目が肝心だよ。どんなものでも、きれいにならべる価値はある。たとえすぐに食べられてしまう料理でさえね」って。ぼくはおばあちゃんのためにオレンジを積んだ。

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コメント

骨太のYAでした。
「犬の力」も気に言ってくださり、嬉しいです!

これはまたまた面白そうな本ですね!
以前、紹介されていたウィンズロウの『犬の力』は、作中すさまじい暴力の嵐が吹き荒れていながら、正統派ハードボイルドのような読後感のある面白い小説でした。

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