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2013.09.16

倍返しより許し

先週、上京したタイミングで映画をみてきました。
岩波ホールで上映中の「楽園からの旅人」。

ちょうど多摩教会の神父様のお話がある回だったので、
1時間半前から列ができはじめ、最終的には長蛇の列でした。

2列になって並ぶことになり、わたしの隣は81歳の小柄な女性。
やはり神父様のお話も目当てとかで、新聞に映画の広告が載ったものを切り抜いてお持ちでした。映画も好きだけれど、岩波ホールで上映される映画が好きな人が多く並んでおられ、わたしの後ろの男性は「楽園からの旅人」を観るのが2回目だそうです。
「岩波ホールで上映している映画は、よく数回みるんだ。数回みてわかることが多いからね」と。その方とは映画が終わったあとすれ違い、2回目はいかがでしたかと声をかけますと、「2回みたことでよくみえてきた。原理主義と本物の違いも」と興奮気味に話をしていました。

81歳の女性とは最後まで名前も名のりあいませんでしたが、映画がはじまるまでずっと話をしました。

15歳の時に洗礼を受けたこと。その後、家族にすすめたわけでもないのに、母親も洗礼を受け、結婚後、伴侶の方も洗礼を受けられたとか。

「キリスト教も宗派がいろいろあるけれど、いっていることは同じなのよね。人間だもの、いろいろある。でもね、あなた。世の中、倍返しで生きていくのではなく、許しだと思う」

なぜこういう話になったのか覚えていないのですが、この方も半沢直樹をご覧になっているのかしらと(聞く事はしなかったのですが)と思いつつ、許しについて思いを馳せました。

映画は神父さまのお話しです。わたしはストーリーというより「木靴の樹」が好きで、その監督の最新作というところに惹かれて観たのですが、想像以上によかった。解体される教会、そこに一夜でできた即席の村。神父さまの苦悩。イスラム原理主義、キリスト教。

映画のあとの神父様のお話は、宗教をもたないわたしに響くものが多々ありました。20分程のお話しですが、震災のことにもふれられ、長い話を聞いたかのような印象です。周りの人をもっと大切にしていきましょうという内容のことも語られ、81歳の女性も「主人をもっと大事にしなくちゃ」と茶目っ気ある笑顔で話してくれました。

映画のあと、81歳の女性とは別れ、わたしはひとりでランチをとり、お店をでると隣のお店で食事を終えたあとの彼女と再会。映画がはじまる少し前には、本の話をしていて、彼女が村上春樹を読んだ話をし、村上春樹が訳した作品も掲載している翻訳短篇集『恋しくて』の紹介記事(新聞の切り抜き)をみせてくれました。その本を買いに行くというので、わたしも買おうとご一緒しました。書泉グランデにはきっと置いてあるわよという彼女の言葉どおり、2人それぞれ本を購入。せっかく東京に来られたのだから、教会も行かれるといいわとすすめられたのですが、そこまでの時間はとれず。

満席の映画館での出会い、なんだか本を開くと思い出しそうです。

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雑記」カテゴリの記事

コメント

野々宮さん

そうですか。児童書コーナーすばらしかったのですね。
動画紹介ありがとうございます。
見たら、ぐっときますね。
地べたの書店で本を買わねば。
こんなに愛されている書店が姿を消さなくてはならないほど、ひとびとはネットで本を買っているのか、はたまたそもそも買わなくなってきているのか。

経済状況がきびしてくも本好きが本を買わなくなることはないでしょうから、ネット買いは増えてはいるのでしょうね。

あの書店に行けば、あの本があるだろう、なにかの本とのであいがあるだろうと思えるのはしあわせですね。

海文堂さん、しみじみざんねんです。

海文堂のような、中くらいの広さの、落ち着ける本屋がほんとうに少なくなりました。
店員さんも本が好きだということがわかる、信頼できる方が多かったので残念でなりません。特に児童書コーナーは素晴らしかったです。
最後の買い物は、石井桃子『家と庭と犬とねこ』、渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ』でした。
店長さんの閉店の挨拶は胸にせまります。下の動画は、もうご覧になったでしょうか。わたしが撮ったものではありませんが、アドレスを貼り付けます。
http://www.youtube.com/watch?v=yLoiLovNAvY&list=UU6Be_br6cZxMbSJ864g17ZQ

野々宮さん

海文堂、99年の歴史ある書店だったのですね。
前夜は多くの方が行かれたとか。
すべてニュース記事で読んだだけですが、長い時間愛されたきた書店も、その地元で役割を終えざるを得なかったのでしょうか。

「楽園からの旅人」も教会がその地で必要とされなくなり、解体されるシーンからはじまるのですが、すこし重なりました。

野々宮さん

「ポー川のほとり」、すぐではないですがいつか必ず観ようと思っています。この方の作品は一度ではなかなかわからないところがあるように思います。

映画館で映画を観るのはいいですね。友達と一緒に行かなくても、同じ空間で一緒にみている人たちがいるというのは。

また映画館のあるところで映画を観ようと、ひとつ映画を観るたびに思います。

好きな書店が閉まってしまうのはさみしいですね。地べたの書店での買い物はほとんどなくなってしまっています。お金を払ってその場で本が受け取れるというのもいいもの。

近くに映画館もすきな書店もないからこそ、であったものに感謝。これも田舎暮らしのよいところですね。

「ポー川のひかり」……昔、ポー川の出てくるドラマ「川の流れはバイオリンの音」が好きだったこともあり、上映時に観にいきました。ぜひ、さかなさんの感想が聞きたいです。ラストシーンをどう受けとめたらいいのか。わたしはクリスチャンですが、あの映画はまだ消化不良です。
「楽園からの旅人」は来月、神戸の元町に見に行こうと思っています。好きだった本屋、海文堂の閉店後なので、前を通るのが悲しいですが。

映画館は、一緒に観る人たちと時間を共有できるのがいいですね。最近観た「風立ちぬ」は、平日でしたが、いろんな年齢層の人が混ざり合って座りながら、画面に見入っていました。わたしも高齢者層に入っていることを噛みしめながら、いい鑑賞ができました。

空さん、わたくしも、もちろんマンローを、そしてあとがきを。言葉は翻訳者によって色がすこーしかわりますね。

許しのむずかしさをしみじみ感じながら、その方のお話しをききました。

bakuさん、「ポー川のひかり」わたしも観たいなあ、DVD買おうかなあと思っているところです。ひとつのことだけにたっぷり時間をかけるのは、贅沢ですね。1時間半並ぶことも含め、いい時間でした。

ナウシカさん、ごぶさたしています。
ふふふ、そうですね。初めて会った人と同じ本を買いに、一緒に書店に行くというのはおもしろいシチュエーションでした。
震災以降、どうも、ものぐさになっているのですが、来年はやまねこオフ参加できるといいなと思っています♪

ご無沙汰しています。

とても素敵な記事でした。

隣の席となった偶然から、本を一緒に買いに行くなんて! さかなさんらしいです。

岩波ホール、私も独身時代によくいきました。ここなら、いい映画を絶対見せてくれると信じてましたから!

さかなさん、震災を機にオフ会が途絶えてしまいましたが、また実現できるといいな。もちろん、いろいろなお気持ちがおありでしょうから、機が熟したらということで!

また、さかなさんから本の知識のシャワー(とっても熱い!)を浴びたいです。

わあ、いい時間を過ごしてこられましたね〜『楽園からの旅人』観たいなあ。前作の『ポー川のひかり』も見そびれたまま、いつかDVDになることを楽しみにしていましたが、結局観ていないままです。(セルはあるのですがレンタルはない)
そしてそして、81歳の方とのお話〜こういうのは映画館に足を運んでこそ、の"であい"ですよね。たまの遠出でも、たっぷりの時間はなくても、目的がちゃんとあったら、こんなふうにすてきな時間の過ごし方ができるんやなあ、と思いました。(←わたしも、と いい刺激をおおきにです)

「縁」というのは、その人の持つ何かが引き寄せるのだとよく思いますが、いかにもさかなさんらしい、81歳の素敵な方とのご縁ですねえ。
「楽園からの旅人」そのうちwowowで見られるかしらん。。。
キリスト教の各宗派だけでなく、まっとうな宗教はどれも言っていることの根源は同じなんですよね、たぶん。倍返しより許し、しみじみ噛み締めたい言葉です。

『恋しくて』、わたしはなによりまずマンローを読んで(村上さんの訳、当然のことながら、素晴らしい!)、それからザムザを読んで、あとはちょびちょび齧ってます。

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