おススメ本

ながいながい旅


ながいながい旅  エストニアからのがれた少女
イロン・ヴィークランド 絵
ローセ・ラーゲルクランツ 文
石井 登志子 訳
税込¥1,995 (本体 : ¥1,900)
岩波書店  ISBN978-4-00-111209-2

 
この絵本の画家、イロン・ヴィークランドといえば、リンドグレーンとの名コンビで知っている方も多いでしょう。本作は、そのヴィークランド自身の幼年時代をもとに描かれた絵本です。

 両親が離婚し、母方の祖母と暮らしていた少女は、戦争がはじまったことにより、今度は父方の祖母の家があるエストニアに移り住みます。戦争の地から少し離れた地で、少女は美しい夏を過ごします。しかし、遠かった戦争がひたひたと近づいてきました。エストニアを離れなくてはならなくなり、少女は漁船に乗り込みます。そしてその船が……。

 美しいエストニアの自然のあとに、どこまでも暗い戦争が描かれはじめ、少女の顔からもだんだん生気が失われていくのは、読んでいてつらいものがありました。最初は私ひとりで読み、次に子どもたちに読みました。上の子は「なんてことだ」と戦争のページをみて言葉を出していました。けれど、ラストの旅の到着したシーンは、ほっとするものがあります。「これは本当にあったことなんだね」と子どもが言います。少女の名前は途中からはっきりするのですが、それが、この画家の名前を一致する時、その後の年月を経て、このような美しい絵本を描いてくださったことに、読者のひとりとして感謝します。
 
 翻訳をされた石井登志子さんによるあとがきも余韻を深めます。

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マイラ・カルマン

The Principles of Uncertainty
The Principles of Uncertainty
posted with amazlet at 08.06.11
Maira Kalman
Penguin Pr
売り上げランキング: 26082

 昨年暮れにこのブログでもこの書影をあげていた、マイラ・カルマンのビジュアル本。購入はしていなかったのですが、友人のブログでとてもよかったとすすめられ、今度こそ注文。届きました。美しい。どっしりしたハードカバー本を開くと、ひたすらにすてきなカルマンのセンスがつめこまれています。

 絵や刺繍、写真にエッセイのような文章が手書きで添えられ、Kalman の世界がぎゅううっと濃密に展開されています。すてき! amazon.comの方[Link]では書影のほかに、中身も少し見られます。でも、やっぱり直接みてほしい。色がきれい、線が自由、写真がユニーク。とってもチャーミングな本です。はじけている絵があったり、笑い出したくなる写真があったり、時に心がシーンとするような静かに豊かになるような大人のお茶の時間が描かれていたり。しあわせになれます。

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究極の孤立


 アンドルー・ラング世界童話集の4巻が刊行されました。今回はきいろ。
 そういえば、偕成社文庫からも今月下旬から、ラング童話集が順次出るようです。

 東京創元社版のラング童話集はとにかく美しいつくり。表紙の絵が毎回どの話しのものか楽しみ。今回は「北方の竜」より(【出典 クロイツヴァルト『エストニアの昔話』より/おおつかのりこ訳】。
 竜を退治するために、魔女姫に近づき、大事な指輪を手に入れた若者の話です。美しい魔女姫の変化はもの悲しいものもあり、最後の問いにはふーむとしばし悩む。

 この話の次に入っている「黄金のカニ」(【出典】シュミット『ギリシアの昔話』より/杉本詠美訳)は、ユーモアある冒頭がとっても楽しい。挿絵もおもしろくって、読み返すとぷぷっと笑いが出る。

 「飛ぶ船」も収録。(【出典】ロシアの昔話/大井久里子訳)。この話は絵本はランサムの再話、ユリ・シュルヴィッツ絵で1969年のコールデコット賞を受賞した『空とぶ船と世界一のばか』で知っている人もいるのでは。
 民話の勉強をしていた時、この絵本の話は民話の形をとてもきれいにあらわしていると教わった。マックス・リュティが"The European Folktale"の中で、民話には究極の孤立、徹底的に孤立することで、徹底的な連結があると書いていますが、「飛ぶ船」の末むすこはとんまだからこそ、両親にも大切にされず兄たちからもバカにされ、家族の中では孤立している。でも冒険にでた時はひとりだからこそ、“超自然的な力”と接触でき、幸運を得る。

 昔話の奥深さを知って読むと、またいちだんと楽しめます。

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書の絵本

月人石―乾千恵の書の絵本 (こどものとも傑作集)

 『とめはねっ』の書道漫画の話題から、『月人石』(乾千恵・書/谷川俊太郎・文/川島敏生・写真/福音館書店)を紹介していただきました。
 そういえばと、本棚を探すと、2003年にペーパーバックで出たものをもっていました。そうです、こちらも書の本、絵本です。そして、書とともに、文、写真も堪能できる一冊。

 巻末には、絵本に掲載された「扉」、「猫」、「風」、「音」など13文字が中国語、韓国・朝鮮語、インドネシア語、アイヌ語など19の言語で紹介されているのも読みごたえ、見ごたえあります。

 見開き右側に写真と短い詩のような文章が、左側に乾さんのダイナミックで美しい書がある構成です。書と写真はぜひぜひ本で直接ご覧ください。文章を2つ引用します。

 かぜが
 きのうを
 きょうにつなぐ

 もじに ひそむ ひとの こころ

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書道漫画

 アバウトミーでお話するようになった方の感想がおもしろそうだったので、さっそく購入。書道部漫画で、文字のうんちくやキャラクター造形のおもしろさで、もう一気読み。つれあいも子どもも夢中になって読んでいます。
 書道は一度も習ったことはなく、学校の授業で学んだだけですが、きれいな文字はみているだけで気持ちよいもの。先月3巻出たばかりだけれど、早く次が出ないかなあ。

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きのうの少年

きのうの少年』  
 小森真弓 福音館書店 ISBN 978-4-8340-2350-3 定価1680円(税込)

 アキがいて、タケやんがいて、達弘がいて、ケイトがいる。小学校6年生、気の合う4人は釣りをしたり、サッカーをしたり、一緒にたくさん時間を過ごしていた。そんな4人の1年間が描かれている。
 すっ、すっと話が進む。ケイトって男子だっけ? アキは女子だよね、と読みながら確認。あえて誰がどんな子だという説明することはなく、物語の筋の中で、ふうっと浮かんでくるように、タケやんや、ケイト、アキや達弘の輪郭がみえてくる。4人の家族もみえてくる。お父さんと2人暮らしのアキ、おいしい手作り料理を出している食堂屋さんのケイトの家族、タケやんはいつも家族一緒にいることが多い。達弘にはお姉ちゃんがいる。子どもにとって、ひとつの世界である家族も、4人それぞれに抱えているものがある。
 日常を少しずつすくいとって物語になっている。誰かの家族だけの苦しみがあったり、喜びがあったりではなく、ふだんの生活の中でおこる波風も等身大に紡がれる。ひとつの事だけをクローズアップすることはなく、積み重ねられていく日々、その時々でみえているものが差し出される。

 料理上手で父子家庭の弟を心配するアキのおばさん。
 洒落た料理をつくる食堂のセイコさん。
 釣りの名人のアキの父さん。
 どの父さんも母さんも姉ちゃんも妹もみんなちゃんと物語の中で生活している。
 みんなにまなざしがそそがれている。
 そんな話が書かれていた。

「(前略)子どもの欲しがる物を与えるのは、親の役目じゃないって」
「じゃあなにが役目なの?」
とうさんは、ふーっと煙を吐いた。ため息みたいに聞こえた。
「セミがどれくらい高い場所にいるのか、いっしょに見ることだったのかもしれないな……」
 今もはっきり目に浮かぶ。セミはとんでもなく高い場所にいた。木はまっすぐに伸びていて、その先に抜けるような空があった。

 

 作者の小森真弓さんの単行本デビュー作。全国児童文学同人誌連絡会発行の「季節風」を主軸に数々の作品を発表しているとある。そう、もうずいぶん前から書いていたのだ。それがこうして、手にとりやすい本の形で上梓された。うれしい、うれしい。『きのうの少年』すごくいいです。

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ユリエルとグレン

ユリエルとグレン 1闇に噛まれた兄弟
石川 宏千花
講談社
売り上げランキング: 75927

 うーん、いい表紙。 祝! 刊行!

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ジーニーが読める!

 ちびちゃんお気に入りの『ランプの精 リトル・ジーニー』[版元Link(ここで少し立ち読みできます)]の新刊が出ました。いつもは1巻ごとに独立した話しなのですが、今回は前作7巻の続きものです。そして、この巻から、総ルビになりました!
(※版元サイトで立ち読みできる箇所にはルビはありません。)

 「あ、私にも読める字が書いてある!」と大喜びのちびちゃんは、「ひとりで読むからね」と、すこーしずつ読んでいます。読んでもらうのも好きな子どもですが、実は自分で“読む”のも大好きなんですよね。上の子の時はルビのついていない本に手書きしたこともありますが、やはり全部の本には無理です。でも、大人に読めない漢字を聞きながらの読書も楽しくないというのは、みていてわかりました。

 私はちびちゃんより一足早くジーニーを読んだのですが、今回もハラハラしたり、ドキドキしたり、なるほどなあと感心したり、楽しい読書を満喫しました。

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課題図書

ブルーバック

 第54回青少年読書感想文全国コンクール[応募要項Link]の小学校高学年部門の課題図書の1冊に『ブルーバック』(ティム・ウィントン作 小竹由美子訳 さ・え・ら書房)が入りました。読書感想文のように、出合った本との気持ちを文章にするのは技術のいることではありますが、それができた時はとてもうれしいものです。これを機に『ブルーバック』がひとりでもふたりでも読んでくれますように。

 いわゆる環境問題とも密接につながっている物語ですが、少年と母の物語として、大人の琴線にも響くと思います。なので大人にもオススメ。

 そのほかの課題図書はこちら。

 

□小学校低学年

□小学校中学年

□小学校高学年

□中学校

□高等学校

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バレエなんて、きらい


バレエなんて、きらい
ジェニファー・リチャード・ジェイコブソン
武富博子 訳
浜野史子 イラスト
講談社 ISBN 978-4-06-214504-6 定価:本体1200円(税別)

 3人の少女、ウィニー、ヴァネッサ、ゾーイは、仲良し3人組。3階の建物の各階に住んでいるご近所さんでもあります。学校でのクラスは違うけれど、放課後は一緒に過ごしていました。ところが、学校にバレエ教室ができてから、3人にちょっと違う風がふいてきたようです。いつも意見が一致するのに、このバレエだけはそうならなかったのです。さて、仲良しさんたち、どうなっちゃう?

 波風たたず、順調に友情をはぐくんできたのは、3人の価値観がぴったりあっていたからなのに、ひとりでもあわなくなると、あれ?と軌道修正しようにもなかなかうまくいきません。こんなこと、子どもの頃のみならず、大人になってからも、人との関係で思い当たるなあと思いながら読みふけりました。ケンカもしたくない、仲良くしたい、でもどうやったら、もやもやした気持ちを整理できるのだろう、前のように戻るにはどうしたらいいのだろう、そんな、すぐに答えにでない少女たちの気持ちに寄り添った文章が、心地よく読み手に入ってきました。爽やかな読後感。少女たちの選択がすてきです。

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えのはなし

えのはなし
えのはなし
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ポール・コックス ふしみ みさを
青山出版社 (2008/01)
売り上げランキング: 566653

 少し前に出た本ですが、とっても楽しくってオススメです。特に絵が好きで愉快なことがなにより好きな人に――。

 翻訳された、ふしみさん推薦の言葉はこんな感じです。

 色がきれいで、へんてこりんで、すっとぼけていて、素朴で、上品で、古いのか新しいのかも、絵本なんだか漫画なんだかお話なんだかもわからない、どんなカテゴリーにもおさまりきれない、楽しい本ができました。

 話の筋は、貧乏な画家が、いばりくさっている王様のお姫様に恋をして、それから貧乏画家はりんごと魔法の筆を交換し、その魔法の筆でいろんな魔法がおこるようになり、お姫様とも王様ともいろいろすったもんだがあり、いろんなハプニングおき、そしてそして最後には……。

 ユーモアたっぷりの力みのない絵が展開するのを読むのはとっても楽しくて、「うそ」とか「ありえない」「ひゃー」とつぶやきながら笑いながら読みました。
 フランスのポール・コックスは、日本の長新太か?!と思うほど、おおらかさとセンスに通じるものを感じました。ぜひぜひ手にとってみてくださいませ。

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食堂かたつむり

食堂かたつむり』 小川糸
 ISBN 978-4-591-10063-9 定価:本体1300円(税別) ポプラ社

 おいしそうなタイトル、あったかそうな表紙、実際に手にとってみたら、心地よい手触りの紙、帯は書影に映っていませんが、ざらっとした織物のような紙で、スピッツの草野マサムネさんが「食べる」ことは愛することであり、愛されることであり、つまり生きることなんだって改めて教えられる素敵な物語でした。と書かれ、ポルノグラフィティの岡野昭仁さんは、毎日口にするごはんにこんなに物語が詰まっているなんて気がつかなかった。これからは大きな声で「いただきます」と言いたい。というすてきな賛辞が贈られています。

 倫子さんは、インド人の恋人とつつましく一緒に、しあわせに暮らしていた、と思っていたのに、ある夜、トルコ料理店でのアルバイトを終えて家にもどると、そこはもぬけの殻。家具も料理道具も何もかもぜーんぶなくなっていました。もちろん恋人も。ひとつ残されていたのは、祖母の形見である、ぬか床。倫子さんは、残された所持金全部で、高速バスの切符を買います。行き先は長い間帰っていない実家。どうしても好きになれない、おかんの元へ帰るのです。そこにはある賭けがあったのですけれど、とにもかくにも、ずっと目標にしていたプロの料理人としてスタートを切ることになりました。一日一組のお客を迎える食堂かたつむりを開店させたのです。

 おかんの飼っていた豚のエルメスさんの面倒をみることを条件に借金をし、倫子さんは自分の城をかまえ料理をするようになります。この豚のエルメスさんもいいんですけど、読み進めるうちに、おかんもどんどん味わいが出てきます。倫子さんとは正反対の空気をもっていて、最初はいいところを見つけるのがむつかしそうな人に思えたのですが、言葉や態度から、今まで見えてなかったところに目が向き、この人と知り合いになるのも楽しいかもと思えてくるのです。

 いつも手助けしてくれる熊さん(注:人間です)も、食べたいものはカレーと注文し、それにこたえるカレーがまたよくて。倫子さんが次のお客様にはどんな料理を考えるのだろうと、わくわくしながら読みました。

 著者、小川糸さんは作詞家で、講談社から絵本『ちょうちょ』[関連Link]を出され、小説は本書がデビュー作です。初めての作品ならではの、荒々しさと瑞々しさが同居して、食いしん坊な方にはたまらない魅力がつまっているように思います。

 私は特に豚のエルメスさんのエピソードが好きです。食べ物もきらびやかな食材ではなく、地元の野菜や肉、近場でとれる魚介をつかって、地に足のついた堅実なご馳走ばかり。食べてくれる人に向かってつくる料理は、日々の家庭料理でもあります。これを読んだら、今日のごはんをつくるのがまた楽しみになってきました。

 Asta2 そしてこの本を読んだら番外編もどうぞ。ポプラ社のPR誌「asta*」2月号で、「チョコムーン」が掲載されています。

 小川糸さんのサイト 糸通信[Link]

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物語が生きる力を育てる

物語が生きる力を育てる』 脇明子
ISBN 978-4-00-025301-7 定価 本体1600円+税 岩波書店

 先日届いた「図書」に書かれていた脇明子さんの文章をラング童話集を紹介するのに引用した際、新刊である『物語が生きる力を育てる』も読まねばと思ったのです。よさそうな予感は大当たり。3年前に刊行された『読む力は生きる力』の第二弾という位置付けで、前著が好評であちこちに講演などに行き、さまざまな場所での読む現場を見聞きし、考察を深めたのが本書です。感覚的にそうかなと思っていた事柄が、的確な文章で差し出され、読んでいて、私自身いろいろ整理できることが多く、抜き書きしたい箇所がいっぱいになりました。

 子どもたちに本を渡すこと、読むことが大事というよりも、子どもたちがちゃんと育つことが大事だということ。それには、本よりも何よりも実体験が重ねていくこと。と、著者がそう思うにいたったことが、わかりやすい言葉で順々に説明されていきます。しかし矛盾するようですが、その実体験をもつことが困難な現代において、子どもたちを支えていく本物の物語もやはり必要なのだということも書かれているのです。

 ここではたくさんの昔話、民話をひきながら、具体的な本もたくさん紹介されています。大好きなデ・ラ・メアも紹介されているのがとてもうれしいです。巻末には、紹介した本の一覧もあり、現在入手が難しい本も含めて入っているので図書館でも探して読むことができそうです。

 興味をひかれたのは「不快感情の体験と物語の役割」です。昔の子どもならわざわざ言ってもらう必要はなかったことだろうとして、著者はこう言っています。

 人間が怒り、憎しみ、妬み、悲しみ、欲求不満、さびしさ、落胆、恨みなどといった不快な感情に振りまわされ、破壊的な行動に走ったり、苦しみを増幅させたりしないですむようになるためには、幼いうちからある程度そういう感情を体験し、まわりの年長者を手本にしたり、うまく手助けしてもらったりしながら、少しずつ感情処理の仕方を学んでいくしかない、ということです。

 著者はゼミの学生に「不快感情に襲われたとき、あなたたちはどうするのか」とたずねてみると、テレビ、音楽、ゲーム、マンガ、ネットという答えがあり、それらはとても「便利な不快感情消去マシーン」になっていると書かれています。確かにこれは得策ではあるけれど、子どものうちから、そういうやり方に頼っていいのかと疑問を投げかけています。自分の不快感情に向きあい、消去マシーンに頼るのがいいのか、正面から対処すればいいのかの見きわめは学習して得ていくしかないのではというくだりは、わかっていた事のように思えるのですが、きちんと言葉として納得がいきました。学習もせずに、消去マシーンを便利に使うだけの生活はどうだろうと気づかせてもらったのです。「力のある物語」は、登場人物や状況に感情移入させながら、擬似的な体験を蓄積していけると私も思います。

 版元の岩波書店サイトで、目次と一部が読めるようになっています。[版元Link]

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ごはん

 朝ごはんは、イクラをひとりスプーンひとさじ分とキヌサヤとワカメとトマトのスープ。
 昼ごはんは、焼きそばとたまごとワカメのスープ。
 夕ごはんは、牛丼とはまぐりのすまし汁。

 今日読んだのは、『ブタとサツマイモ』。南太平洋の国・パプパニューギニアの暮らしを生態学を専門分野とする著者が、その土地に暮らして人々の生活をみつめた、子ども向けノンフィクション。主食となるサツマイモ、「最高のごちそうであり、ペットであり、狩猟の対象となる動物」であるブタに主眼をおいて、おもしろい読み物になっていた。サツマイモが何十種類もあって、両手に別々の種類のサツマイモをもち、食事をするというのが興味深かった。

ブタとサツマイモ―自然のなかに生きるしくみ (自然とともに)
梅崎 昌裕
小峰書店 (2007/11)
売り上げランキング: 300948

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ペネロピ

『ペネロピ』
マリリン・ケイ 永瀬比奈訳 ISBN 978-4-15-041158-9 定価(本体571円+税) ハヤカワ文庫

 2008年2月下旬より、テアトル・タイムズスクエア他全国順次ロードショーで公開される映画『ペネロピ』[公式サイトLink]のノベライズ本。

 主人公、ペネロピ・ウィルハーンは名家のひとり娘。家柄がすばらしく、ペネロピ自身もすてきな令嬢であるにも関わらず、お年頃になってもなかなか決まった人がみつからない。なぜなら……。

 おとぎ話のような設定なのだけれど、ストーリーに流れる空気は現代。ペネロピは、ひいひいひいおじいちゃんの悪しき行為のためにかけられた呪いのせいで、自由な生活を送ることができない。オシャレをして友だちと外出し、おしゃべりに興じることもしない。自分で店に出かけて洋服一枚買うこともない。母親も今のあなたは本当にあなたではないと繰り返し娘にいう。いま、こうして生きて本を読み、植物を育てている、ペネロピは、ではいったい誰なのか。

 少女の成長物語なのだけれど、おとぎ話をエッセンスに、現代の普遍的な物語になっている。最後のカタルシスはすばらしい! 夜中にひとりよんで、「きゃー」と思わず喜んでしまった。すてき、すてき。ペネロピいいな。映画がこの田舎にくるかどうかはおそらくムリだろうけれど、映像のペネロピにもぜひ出合いたい。

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彼岸花はきつねのかんざし

彼岸花はきつねのかんざし
 朽木祥・作 ささめやゆき・絵 学研
 ISBN 978-4-05-202896-0
 定価 1200円+税

『かはたれ』、『たそかれ』の作者、朽木氏の新作読み物が出た。今度はどんな物語を紡いでくれたのか。胸がはやった。

帯にはこう書いてある。

「あたし、わりあい化かすのがうまいんだよ。」と、子ぎつねはいった。
かけがえのない日々をうばったのは、一発の大きな爆弾だった……。

 戦争の物語なのだ。ちょっと肩に力が入る。どんな風に語られるのか、と。しかし、読み始めると、日常とファンタジーとのゆるやかな境界での語り口に、心はすっと物語に入っていく。

 也子(かのこ)の家の裏には竹やぶがあって、おばあちゃんは、おきつねさんに、しょっちゅう化かされている。お母さんは、子どもの頃よく化かされていたが、大人になってからは大丈夫だという。也子は、おばあちゃんや、お母さん、ねえやん、男衆のコウさんから、いろんな竹やぶでのできごとを聞いていた。そうしたら、ある日、子ぎつねにであう。「あたしは、まだ、おきつねさんとは、とうてい、いえない。」、そう自分のことをいう子ぎつねに。
 おきつねさんときつねさんは、どう違う? 子ぎつねは也子に「あんた、あたしに化かされたい?」と聞いてきた。

 あっというまに、きつねのいる世界と人間の住む世界がつながって、自然に物語は展開し、おきつねさんにも、きつねさんにも近しさを感じて、楽しくなってくる。でも、戦争が消えたわけではない。戦時下での物語、也子の住むところにピカドンが落ちる、ある刹那に――。

 朽木氏の筆致は、いつの時でも声高ではない。静かに、ほがからに物語を紡ぎつつ、被爆二世の作者は同じ土俵で厳しく冷たい戦を書く。おそらく、祈りをこめて。読んで受けとめるのは私だ。作者があとがきで書いた「子どもが子どもらしく生きることのできる日々」をつくるのも大人の私なのだ。

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潜水服は蝶の夢を見る

潜水服は蝶の夢を見る
ジャン=ドミニック ボービー 河野 万里子
講談社 (1998/03/05)
売り上げランキング: 4477
 

 2008年2月から映画公開される原作。映画は2007年カンヌ映画祭監督賞および高等技術賞を受賞している。映画公式サイトの予告編をみてから、本をぱらっと開いて読み始めたら、言葉の力にひきつけられ一気に読んでしまった。おもしろいタイトルだと思って惹かれていたのだけれど、これほどの意味をもった言葉だとは。読了してはじめてタイトルの意味を深く知りました。

 著者はもともとは作家ではなく、雑誌「ELLE」の編集長としてパリで活躍していた。しかし、ある日、突然の脳出血ののち、難病ロックトイン症候群とよばれる身体的自由を一切奪われた状態になる。ロックトイン症候群とは、自分の意識で身体を動かせない状態においても、意識は鮮明なのだ。自らの意識で動かせるのは、左目の瞬きだけだった。その瞬きで綴ったのが本書。

 43歳の働き盛り、恋人もいて、子どもも3人いた。仕事も順調で人生を順風満帆ですすんでいた時におそった難病。しかし、本書は、病気の痛みや苦しみ、それを乗り越えての執筆について費やされているのではなく、それまでの日々の追憶、回想、現在の思索、いずれもが、エレガントな筆致で的確に輪郭のはっきりした文章で綴られていて、ひとつひとつの文章がまるでおいしいご馳走のような味わいをもっている。構成もすばらしく、最後の二章、これを最後にもってくるという組み立て方に感じ入ってしまう。

 訳者あとがきタイトルは「魂のエレガンス」、その言葉がぴったりくる一冊だった。

 映画「潜水服は蝶の夢を見る」 [公式サイトLink]

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エヴァ・ビロウの絵本


『ハリネズミかあさんのふゆじたく』
(エヴァ・ビロウ さく・え/佐伯愛子やく/フレーベル館)

 縦19cmほどの、小さくてかわいらしい絵本。手にとるのがうれしくなるサイズの絵本です。
1948年初版のもので、1990年に復刊。そして、今度は私たち、日本の子どもたちも読めるようになったのはとてもうれしいこと。作者、エヴァ・ビロウは1902年にスウェーデンに生まれ、10歳の頃に、エルサ・ベスコフと出会い、絵本の世界に入ろうと思ったそうです。その意志をつらぬき、ストックホルムの美術学校にすすみ、その後40年以上にわたって、教師と絵本制作のふたつの仕事に携わり、1961年には、エルサ・ベスコフ賞を受賞しています。この絵本の原画は、現在スウェーデン国立博物館が所有しているとのこと。1993年に永眠。

 さて、絵本の物語は、こんな風です。
 ハリネズミかあさんには、10ぴきのこどもがいました。ある日、こどもたちに冬の靴をつくってあげようと思いたちました。まず蛇の皮をとりだし、うさぎに靴の形に切ってもらうようにお願いします。そうして、様々な工程を動物たちにお願いしていくのですが、なかなか計画どおりにはいかず……。

 シンプルな二色刷の絵は、軽やかで楽しいハリネズミかあさんと、元気なこどもたちを描き出し、靴がどうやってできていくのかしらという興味をひっぱります。わが家でも、3人の子どもたちに読んだのですが、次々に起こるハプニングに、だんだん笑いがとまらなくなり、最後にへぇーとなっていました。

 うれしいことに、この絵本は(以下続刊)とありましたので、また次の楽しみがありそうです。わくわく。

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ネズミの生活

ネズミ父さん大ピンチ!

 昨夜読み始めたら止まらなくなってしまった。
『ネズミ父さん大ピンチ!』
(ジェフリー・ガイ 作/ないとうふみこ訳/勝田伸一絵/徳間書店/2007.12)

 ネズミ父さんの名前はアナククグリ。一家は、ネズミ母さん、子どもたちと人間の家の壁の中で暮らしている。ハツカネズミの性質は、外で生活するよりも室内での暮らしを好む。しかし、家の中も外同様に危険は大きい。一番は家の人間たちがネコを飼っているかどうか。前の住人が引越していき、新しく住み始めた人間たちは、始めこそネコを飼っていなかった。しかし、アナクグリ父さんの三番目の息子が人間に見られてしまい、とうとう黒ネコ、ハンニバルが飼われはじめる。アナクグリ父さんは、ネコから逃げることはせず、なれ合い関係ギリギリの線でもちつもたれつの均衡を保つ。とはいえ、それがなかなか難しく、やはり日々はスリルに満ちあふれているのだ。

 小学校低学年向けだからと安心して(?)読んでいたら、すぐさま、ざらっとした気持ちなる描写にぶつかる。その後も、そのざらりとした気持ちはきれいに解消されることはなく、時折、同じ気持ちを呼び戻される。とはいえ、そこはとても丁寧な言葉で訳され、だからこそ信頼して読みすすめられたのだと思う。気にしないで読み飛ばせるほどの引っかかりを、最低限に抑えてくれているからこそ、物語の本筋の魅力を失わせていない。

 そう、本筋はアナクグリ父さんが、いかに家族を守り智恵をはたらかせ、勇気をもっているかということ。そこのところは文句なく楽しい。きっと子どもたちも、ネズミたちのハラハラドキドキに惹きつけられるだろう。まずは、我が子に明日すすめようっと。

 それから、もうひとつ。訳された日本語の表紙絵は物語とあっていてとてもステキ。原書をみると、こちらは、ぞくりとする感じです。

Hannibal's Rat
Hannibal's Rat
posted with amazlet on 07.12.28
Geoffrey Guy
Hodder & Stoughton (2003/10)

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100年(3)

 100年前の今日、アストリッドさんが生まれました。たくさん、たくさん物語を書き、2002年に空へと旅立たれたのです。
 『ペーテルとペトラ』のcopyrightをみると、テキストは1949年になっています。1944年から懸賞小説に応募し1945年に『長くつ下のピッピ』が懸賞小説一等賞で刊行されていますから、この作品も初期のものでしょうか。絵のcopyrightは2007年。2001年にエルサ・ベスコフ賞を受賞しているクリスティーナ・ディーグマンが描いています。

 物語はグスタフ・ヴァーサ小学校で起きた不思議な出来事について――。一年生のクラスに、小さな男の子と女の子が「名まえは、ペーテルとペトラです」と名のり、学校にいれてほしいと先生にお願いに来ました。先生は小学校の学区に住んでいるのだからと了解し、ペーテルとペトラは熱心に勉強します。最初にふたりがドアをコツコツした時に教室のドアを開けたグンナルが、ふたりの一番の友だちになります。グンナルはペーテルとペトラが大好きになり、冬のある日、ふたりの家を訪ねることにしました。グンナルは子どもですが、小さい人たちの小さい家にはさすがに入れません。外からふたりの家の様子を眺めたあと、3人で外遊びをします。こうして、いつまでも友情をあたためていけると思っていたとき……。

 リンドグレーンは、楽しい楽しい物語とともに、胸がきゅうっとなるような、優しくてせつない物語も多く書いていてます。この絵本も、読んでいてほかほかとうれしくなるのですが、センチメンタルではない、せつなさにも満ちています。私はペーテルとペトラが、グンナルに書いた手紙の文章――やあ、グナル、きみはすてきなおともだち。――という箇所が大好きで、読むとなんだか涙が出そうな、うれしいようなさみしいような気持ちになるのです。

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せんのたび

ローラ・ユンクヴィスト さく ふしみ みさを やく 講談社 978-4-06-283010-2 本体1500円

 楽しい絵本が出ました。ローラ・ユンクヴィストさんいうニューヨーク在住の作者が、ひとふでがきで、絵本をつくりました。ひとふでがきの線の上に、町があり、車が走り、人々が生活しています。線を指でたどっていくと、町を通り抜け、海を渡り、海の底まで沈んだあとは、高くのぼって、空へと。そして……。

 翻訳したふしみみさをさんは、新しい絵本を送ってくださる時に手紙をつけてくれるのですが、絵本にはあまりつかない訳者あとがきならぬ、そのつぶやきが、絵本の魅力をいっそう伝えてくれるのです。みさをさんの了解を経て、一部ご紹介します。

 まっ黒な絵本をお送りします。これは表紙から裏表紙まで、すべて1本の線で描かれています。タイトル文字は、作者のローラさんが日本語版のためにデザインしてくれたものですが、それは見事な出来映えです。潔く、しゃれたデザインを、ぐっと身近にしてくれました。まっ黒な絵本は稀ですから、これが児童書コーナーに並んだら、小気味よいなあと思っています。
 (中略)
 どうぞ、「せんのたび」をゆっくりとお楽しみください。

原書はこんな感じです。

Follow the Line Follow the Line Through the House

線の絵本のサイト[follow the line]もあります。このサイトでは、ダウンロードできる、塗り絵や線と線をつなげて絵をつくることができるもの、カード合わせゲームができるものもあり、私もちびちゃんと塗り絵と線の絵で楽しみました。

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海外の絵本作家たち

 柴田こずえさん聞き手による(別に通訳あり)、6人の海外絵本作家インタビュー。エリック・カール、クェンティン・ブレイク、M・B・ゴフスタイン、ディック・ブルーナ、ジョン・バーニンガム、レイモンド・ブリッグズ。それにプラスして各作家に寄せる日本の作家がスペシャルエッセイを寄せています。

 一度に読むのではなく、少しずつ作家ごとにゆっくり読んでいるところです。最初から読まなくても、気になる人の話から耳を傾ける。同時期に、バーニンガムの自伝がほるぷ出版から出ていますが、自分で語る自分と、人から引き出されるバーニンガムと別角度からいろいろ見られるのもまたおもしろいです。

 現在でも最初から絵で食べていくのは苦しいでしょうが、クェンティン・ブレイクも、両親から絵では食べていけないといわれ、最初は絵ではなく文学を勉強していきます。でも、学生時代から雑誌「パンチ」に投稿をはじめ、どんどん掲載されていったそうで、やはり才能があったのでしょう。ブレイクには、柳瀬尚紀氏がエッセイを寄せています。ダールの作品を訳していく上でブレイクの挿画となじみになったことを書いたあと、朝日新聞のコラムの文章で、「柳瀬訳もなかなかいいのではないか」と書かれたことについて、“柳瀬訳は問題なくいいのだ。この際はっきり言っておく”ときっぱり書いています。 

 レイモンド・ブリッグスのインタビューで印象の残ったのは、このやりとりです。

 

――コミック・スタイルの絵本を作るにあたって、コミックではなく、「絵本」という形にするために、何か工夫をしていることがありますか?
 絵本なのかコミックなのかということはまあり考えたことはないし、コミックとの違いをつけようと、工夫していることは何もありません。最近イギリスでは、『Erthel & Ernest』に対して、「グラフィック・ノベル」という言葉を使って表したりしていますが、それもなんだか好きじゃない。もともと小説なんかじゃないと思ってますから。私は「ストリップ・カートゥーン」でいいんじゃないかと思ってるんです。

 1989年以降、絵本を発表していない、M.B.ゴフスタインのインタビューはどの言葉も静かに、ゆるがない芯を感じました。数年学校で絵を教えていた時のことを幸せだと語っているのが印象に残ります。“教えることは本当に大好きでした。本を書くようなことです」と言っていて、生徒たちに自分たちの本当の作品を見つけ出させる手伝いは、自分の本を言葉にするために、正しい言葉を探すその作業によく似ていると。写真もお好きだというゴフスタインさん、人形をとった写真絵本がとても素敵でした。

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どの言葉も引用したくなる

 この本を読んでいる最中、どの言葉もノートに書き写したくなった。 あれこれページを繰っていると、どの言葉もわかりすぎるくらいにわかり、こんな風にまっすぐ表現できるんだと、どれだけの安心感をもらったか。
 まるで、本の中の著者と語り合ってるかのような気分になり、くつろいだ気分で好きな飲み物を口にしながら、夜中に読了した。

 夏、わたしはおじといっしょにリンゴの木の下でレモネードを飲みながら、あれこれとりとめもないおしゃべりをした。ミツバチが羽音を立てるみたいな、のんびりした会話だ。そんなとき、おじさんは気持ちのいいおしゃべりを突然やめて、大声でこう言った。「これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ」
 だからわたしもいま同じようにしている。わたしの子どもも孫もそうだ。みなさんにもひとつお願いしておこう。幸せなときには、幸せなんだなと気づいてほしい。叫ぶなり、つぶやくなり、考えるなりしてほしい。「これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ」と。

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びっくりしました

 時々読んでいたブログで、打海文三さんの訃報を知りました。びっくり。昨年読んだ『愚者と愚者』に衝撃を受け、『裸者と裸者』をさかのぼって読み、そして『覇者と覇者』の刊行を待ち望んでいたのに。ご本人のブログも亡くなる2日前まで更新されていた。享年59歳という、これからという若さに、残念な気持ちでいっぱいです。ご冥福を心よりお祈りします。

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月のうた

Tsuki 民子さんという、いまどき古風な名前の少女は母親を癌で亡くし、父親とふたり暮らしをしていました。それから二年後、父親は会社の同僚と再婚します。宏子さんという女性は、よくいえば天真爛漫、ひねたいいかたをすれば、人の気持ちをくむのが下手です。民子さんは、おばあさんから厳しく躾けられたことこもあり、宏子さんのおおざっぱさについていけない時もあります。けれど、宏子さんが気持ちのよい人だとも気づいていくのです。

 静かでまじめな小説です。
 物心ついてから、新しい大人を家族に迎えるのは、へんなたとえかもしれませんが、嫁と姑がおうおうにしてぎくしゃくするように、むつかしいものだということは想像できます。民子さんが、小学6年生の時に迎えた新しいおかあさんと、日々の生活、とくに食卓を囲むところで気持ちがささくれるのは、切ない場面でした。おみそ汁の出汁、お番茶、おせち料理、いろんな場面で、民子さんは逡巡します。どの描写も、地に足のついたもので、静かな筆致ながら輪郭のしっかりした物語が心に届く心地よさがありました。

 第2回ポプラ社小説小説大賞優秀賞作。
 『月のうた』 穂高明著 1260円(税込) ISBN 978-4-591-09955-1
 ポプラ社月刊誌「asta*」11月号では、著者インタビューも掲載されています。

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オープンソースとは

オープンソースの逆襲 』 吉田智子[Link」著 出版文化社[Link
ISBN 978-4-88338-368-9 税込1500円

 正直、封をあけてこの本を見たとき、はたして私に読める(楽しめる)のかしらというのが第一印象でした。しかし、親しみやすいペンギンの絵と、ソフトカバーのやわらかさが敷居を低くし、それになんといっても著者は吉田さんです。「はじめに」の中で、この本の読者対象者は、「知的好奇心を持っている一般社会人の方」に設定したとあるように、読み始めると、インターネットやメールを初めて目にした時の、ワクワク感を思い出しました。

 20年には届かないものの、そのくらい前に私は仕事の関係でテクニカルライティングを勉強していました。その時の先生が吉田さんです。京都KABA自由大学(いまはありません)というネーミングもユニークなその場で、ライティングと共にインターネットに初めて触れることにもなりました。いまのように簡単に接続できる環境ではなかったのですが、新しい世界を見たあの時の驚きや楽しさは、いま私がこうしてネットを使って仕事をするようになったのと決して無縁ではないと思います。悪の部分もとりあげられることが増えてきているネットですが、最初は知的好奇心を満たしてくれる優秀なツールとして、まぶしく見えたものです。

 本書では、インターネットの発展とオープンソースの関係をわかりやすく、年代を追って解説していきます。吉田さんの文章はわかりやすく、頭がきれいに整理されながら読みすすめることができます。読んでいるうちに、オープンソースが少しずつ頭に入っていき、なんだか頭もよくなってくるような気が(笑)。各章ごとに、たとえ話のオープンソース物語もおもしろく、章ごとにコンパクトにまとめられた項目もあるので、常に復習しながら読めるのも魅力。

 そしてもうひとつ。ネットと子どもといえば、使い方次第によっては悪にしかならないという風潮が強い昨今ですが、この本では、教育現場におけるオープンソースの利点、プログラミング教育など、子育てをしている私にとっても考えることが多くありました。ネットで情報収集する力を得る前に、学んでおくと楽しいことがあるのだと。

 それにしても著者プロフィールの写真がなんてお茶目。あー、吉田さんらしい!と何度見ても和みます(笑)。いい本を書いてくださりありがとうございます。

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ホールドアップ

 うれしい情報をいただきました。
 以前ここに書いた、『ブック・アートの世界』の本で紹介されていた、キース・ゴダードの"Holdup"という写真絵本が、京都の恵文社にデッドストックで入荷予定[Link]とのことです。さっそく予約をいれました。届くのが楽しみです。

 "Holdup"では、それぞれの指が実物大で撮影され、年齢も人種もさまざまな指がリアルに紙面に置かれています。そして指たちが会話を交わすのです、読者もまきこんで。</