雪沼とその周辺
堀江敏幸氏のわりと新刊『雪沼とその周辺』
7つの短編が掲載されている。
雪沼という土地で、暮らす人々が描写される。タイトルの作品はないのだが、これが短編の流れを伝えている。
最初は「スタンス・ドット」
ボウリング場を経営してきたが、こだわって選んだピンの倒れる音が、聞こえなくなってきた。耳が悪くなっているらしい。潮時だろう。妻も亡くなった。その経営最後の日を描いている。お客はひとりもなく、しめる30分前に入ってきたのは、トイレを借りたいカップル。思わず最後に1ゲームどうですかと声をかけ、それを見ながらいままでの出来事を回想する。堀江氏は、市井の人を静かに、そして少しこだわりをもって書くのがうまい。じわっとしみいってくる。
次はフランス料理店を経営していた女性の話。「イラクサの庭」。彼女が亡くなったところから始まる。ゆかりの深い人たちの会話から、彼女のすがたがみえてくる。
こうして、人や場所が少しずつクロスしながら、短編が連なる。
私の好きなのは、最初の2編。もちろん1冊の本、全体の構成もとてもいい。
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