気持ちのひきだし
きちんと説明を添えていないのだが、ブログにリンクさせてもらっている方々はみな読書家。みなネットで知り合った人で10年以上のつきあいの人もいる。そのリンクさせていただいてる、Blue Boxを読んで気になった本、光原百合さんの2冊を読了。あらすじは、Blue Boxをば。
アマゾンでこの作家の作品は、北村薫や加納朋子が好きならばはまるであろうというレビューがついていた。なるほどと納得。『時計を忘れて森へいこう』は、まさに北村薫の女子大生の「わたし」と円紫師匠の名コンビを彷彿させる。そしてどちらも、人の悲しみの核をミステリというものに覆わせて気持ちをほぐしてくれる。小学生の思いで話をする護さん。クラスのひとりが「大きくなったら大人になりたい」と言ったエピソードを翠さんに伝える。笑顔がこぼれた翠さんに、その「大人になる」ことを望んだ小学生の背景を語る。なにげない言葉のみえないところにある物語は、ちょっと切ない。私にもそんな話を聞いたことがある――読んでいくと、そうやって気持ちのひきだしがどんどん開けられていくようだった。『遠い約束』も、『時計を忘れて森へいこう』と同じ空気が流れている。関連性のない2冊だが、登場人物の語るトーンが静かなのだ。大事なことも、ささいなことも声高ではない。『遠い約束』にでてくるひとりが言う「本格推理小説っていうものにはな、綺麗な解決が何より大切なんだ」
ほぐされている気持ちのやり場に少々とまどいながら、綺麗な解決をたっぷり楽しんだ。
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