ダルシマーを弾く少年
『ダルシマーを弾く少年』は、作者ではなく挿絵を描いているブライアン・セルズニックさんに興味があった1冊。本についている説明によるとダルシマーは台形の木製共鳴箱の上に、金属弦を張り、細長い2本のバチで打奏する楽器。流浪の民・ロマたちの合奏でよく使われ、日本ではツィンバロンともいうとある。柳行李の中にいれられ、親戚に届けられたウィリアムとジュールの兄弟。そして兄弟と一緒にあったのがダルシマー。最初は渡されなかった楽器だが、ふとしたことから、ウィリアムに弾く機会が与えられる。ウィリアムは少しずつ調律してダルシマーを弾きこなしていく。預けられた先の家では優しさをかけられることも少なく、弟は口をきかないで成長している。どうしようもないことが起こり、ウィリアムはジュールを置いてダルシマーと共にいままで住んでいた家を離れた。それから彼はダルシマーを弾くことで生活をしていくようになり……。
セルズニックさんの挿絵は、どこかなつかしく、あたたかい優しさが伝わってくる。モノクロで描かれているが、光などはくっきりと浮かびあがるように描かれ、どの絵も物語にぴったり吸い付いている。静かに物語は進行し、静かに終わる。ラストも自然な美しさがある。よかった。表紙は原書とかなり違う。読了後はどうしてこのような表紙にしたかがわかる、気がする。が、ここまで葉を全面にださなくてもいいかなと思う。
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