ミルン
『今からでは遅すぎる』は、ミルンの自伝だ。ミルン自身の12歳までの思い出がメインで、子ども時代の楽しさが言葉どおり、キラキラ光っていた。石井桃子さんの訳も流ちょうで、最初から日本語で書かれたと思われるほど、日本語になじんだ文体になっている。私自身は子ども時代にプーさんには出会っていない。自分の子どもが生まれ、彼らと一緒にプーを楽しんでいるところだ。子どもたちは、楽しいもの、美しいものをみて心が動かされた時は、のどから鈴の音がなっているようにコロコロと笑う。プーさんの本もそう。時に、ころげまわるほど楽しんでいる彼らと一緒だから、私も存分にその世界を味わっているのだと思う。
『クマのプーさんと魔法の森』は、クリストファー・ミルンの自伝だ。かくも有名になってしまった、クリストファー・ロビンの子ども時代。同じ石井桃子さんの訳のおかげで、父親の自伝と息子の自伝が糸でつながっているようにみえる。プーさんがどうやって生まれたか、そういう空気が書かれている。
私が父から受けついだものの一つは、たぶん、彼の「誇り」にたいする態度だろう。ひとは、自分が何かをよくやったと心から信ずることができれば、そのことを誇りに思っていい。そして、他人の賞賛のことばに、うれしく、しかし、謙虚に、ひたることも許される。だが、けっしていい気になったり、高慢になったり、公の場所で威張ってみせたりしてはならない。罪源といえるのは、むしろ誇りよりも慢心である。これにつづくくだりが、クリストファー・ロビンが生まれた彼自身による所以でなるほどと思わせる。さて、次は『クリストファーロビンの本屋』を読む予定。ずいぶん本だなに眠っていた本を読む時になったようで楽しみ。
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