くうきのかお
食器棚や押し入れに
しまっておくものじゃない
記憶は ひんやりした流れの中に立って
糸を静かに投げ入れ 釣り上げては
流れの中へまた 放すがいい。
「釣り上げては」という詩の一部分だが、この詩でアーサー・ビナードという詩人を覚えた。詩のほかに、絵本の翻訳やエッセイなども著していて、先日読んだ『くうきのかお』という、福音館書店「美術のゆうえんち」シリーズの1冊がすごくよかった。葛飾北斎、熊谷守一、前田青邨(せいそん)、ゴヤ、ゴッホら名画15作品を構成し、アーサー・ビナードがそれぞれの絵のもつ“くうき”を言葉にしていく、詩のように。ボッスの描いた「十字架を担うキリスト」の絵では部分を見せて、こう語る。
だれが すいこんだか で
くうきの かおつきは
ガラリと かわる。
くちの なか
はと はの あいだ
のどの おく
はなの あなの
まがりかど。
表紙絵は北斎のひきがえるの絵。カエルをつつんでいる空気を見のがしたくなかったと、アーサー・ビナードがあとがきで書いていた。
![]() | くうきのかお(びじゅつのゆうえんち) アーサー・ビナード構成・文 |
![]() | 釣り上げては アーサー・ビナード著 |
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