ヒゲ父さん
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1985年に岩波少年文庫で刊行された『おとうさんとぼく』の2冊は宝物本でした。もう何度も何度も読み返し、好きなコマは誰彼ともなく見せ、本を買っては人にプレゼントした時期があったほどです。あれから20年。いつかはまた復刊されるのではと思い待っていたところ、青崩堂さんより原書に近い形で3冊刊行!! やった!
私が読んで読んで読みまくったこの本を、いまわが家の子どもたちが楽しんで楽しんでいた『おとうさんとぼく』、もう紙は黄ばみ、年季も入っています。そこへ届いたぴかぴかの3冊にじーんと感動しました。うれしい。
岩波少年文庫の2冊は、原書3冊からの抜粋で、1巻めに上田真而子さんのすばらしい文章が入っています。ほのぼのとしたおとうさんの優しさ、愛情を感じたあとに読んだ「e.o.プラウエンについて」は衝撃をうけました。20年の間、なんどとなく読み返しても、すさまじい時期に書かれたこれらのマンガに感謝したくなるのです。プラウエンは筆名で、子ども時代を過ごした土地の名前、本名オーザーが息子クリスチアンと幸せそうな表情でうつっている写真も載っています。ヒトラーの暗い時代、オーザーの風刺は当局の気にさわるものとなり、
執筆停止処分を受けます。しかし、出版の自由を守ろうとしたウルシュタイン社はオーザーを採用しました。条件は「非政治的な絵にすること、変名で出すこと」です。そこからオーザーはプラウエンを名のるようになり、「おとうさんとぼく」の連載が始まり人気を博します。「『おとうさんとぼく』は全体主義の中で人間性をおしつぶされていた1人1人が、本当の人間に出会えてほっと一息つけるオアシスでした」と、上田さんは紹介されています。オーザーは後にゲシュタポに逮捕され、裁定がくだされる前夜、自死を選びました。妻に残した遺書にはすべてドイツのためにしてきたという言葉と息子を人間に育ててくれという言葉があったそうです。
オーザーは非政治的にという執筆の条件を逆手にとって、永遠に人間的なものを守りとおし、人びとの心をしっかりつかまえたのでした。そういう仕方で体制への不参加を貫き通しました。みごとな抵抗だったといえないでしょうか。
上田真而子さんが書かれたこの文章は胸をつきます。
わが家の子どもたちは、本当にこの本が大好きで、読むとコロコロとほがらかに楽しんでいました。 ですので、新しいぴかぴかの「ヒゲ父さん」が届いて大喜び。無言でページをめくって、やっぱり笑っています。
今回刊行された青萠堂さんは、ドイツに長く滞在されている方からこれらの本を紹介され、各国で人気を博しているこの本をぜひ原書に近い形で出したいと思われていたそうです。それぞれ50編、計150編を読むことができ、原書に掲載されているあとがきの文章や刊行にあたっての文章も翻訳され、読みごたえのある3冊になっています。愛情あふれるヒゲ父さん、息子が大好きで、自分も子どものような感性をもちつづけるヒゲ父さん、なにせあったかくておもしろい。ついつい昨晩も夜更かしして読みふけってしまいました。オススメです。
ぷ~ら♪さん
はじめまして、コメントありがとうございます。ブログも読ませていただきました。そうかこの地にお住まいなのですね。布製の袋まであるんですか。かわいい! すてき! そして木ぞりもすっごくいいですね。
あぁ、私もいつか訪れてみたいです。本の紹介もありがとうございます。機会をみつけて読んでみたいと思います。またブログ読ませていただきまーす。
投稿: さかな | 2006.01.29 10:24
はじめまして。こんにちは。 住んでる町をネットで検索してて、ここにたどり着きました。私もこの本が大好きです!もちろん、3冊とも手元にありますよ♪‘おとうさんとぼく’という邦題は知っていましたが、3冊それぞれにこんなタイトルがついていたとは知りませんでした。 去年日本で発売された‘Deutschland~あれこれおしながき~’という本でも、作者Erich Ohserについて紹介されていますよ。彼やこの本に興味を持った日本の人達がこの町を訪れてくれると嬉しいな~~と思ってます。
投稿: ぷ~ら♪ | 2006.01.28 18:18
せいさん
あとがきがもうたまりません、よね。
初めて読んでからもう20年もたつんだと少々びっくりしました。この愉快な家族を描くために作者はすべてをかけてくださったんだと感謝します。
投稿: さかな | 2005.10.25 11:44
ご紹介で気になったので、こないだ図書館で岩波のほうを立ち読みしてきました。
ゆかいで心温かなヒゲ父さんに笑いました。
んで、あとがき読んで落涙してしまいました。
さかなさんは、いい本の引き出しをたくさん持ってますなぁ。
投稿: せい | 2005.10.24 19:52