釣りと友情のエッセイ
『ジョーアンドミー』 ジェームズ・プロセック 光野多惠子訳 青山出版社
あー、気持ちのいいエッセイだった。1975年生まれの著者は、大学在学中に『図説 トラウトの歴史』をだし、自身が描いた水彩画はニューヨーク・タイムズでも賞賛されたという。本書は著者にとって2作目で、今回も挿絵を描いている。 ジェームズは釣りが好きで好きで、とうとう(?)禁漁区での釣りにはまってしまい、その時に出会ったのがジョー・ヘインズと出会う。ジョーは禁漁区の監視員をしていた。てっきりつかまると思ったが、ヘインズはそうしなかった。ひどい悪天候にのこのこ密漁しているジェームズに、ヘインズは釣り好きの魂を見いだしたらしい。そこから年代を超えて、友情がはぐくまれていく。2人を深くつなぐのは釣り。訳者あとがきにあるように、彼らの釣りは非常に幅があり自由だ。
「ある日、フライでブルックトラウト(カワマス)をねらったかと思えば、別の日には、落ち葉をひっくりかえして見つけた虫で、同じ<ブルッキーを釣る。(中略)そのほか、カニとりや、貝とりや、フライに使う羽根を手に入れるためのキジ猟など、まったくどうしてこんなにと思うほど、楽しいことがつぎつぎと出てくる」
(あとがきより)
釣りの深い楽しみと愛情が、気持ちよく伝わってくる。好きなものを好きとまっすぐに書けるのはすてきだ。挿絵の水彩画もきれい! 私自身の小さな釣り経験は京都に住んでいた時、鴨川の上の方でちょろりと楽しんだくらいしかもっていない。京都を離れてからは、釣りをしたことがないけれど、あの時間はおもしろい時間が流れていたことを本書を読んで思い出した。
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hanemiさん
著者のサイトもこのポストをするときに見ました、きれいですよね。好きなものをこんなに素敵に表現できるのがうらやましく思えました。
手元においてときどき読み返したくなる本ですよね。
hanemiさんの感想も読みましたー。エッセイだからこそ、いろいろな共時性があったのかもしれませんね~。
投稿: さかな | 2005.12.06 22:57
追伸です。
僭越ながら、トラックバックさせていただきました。
ご存知かもしれませんが、著者のサイトはおすすめです。うっとりします。
投稿: hanemi | 2005.12.06 18:58
さかなさん、こんにちは。
遅ればせながら、この本、読みました。挿絵も文章もいいですね~、とっても。読んでいる間、いろいろなシンクロニシティがあって(ばかばかしいのでここには書けませんが~)、より印象に残りました。
間抜けな感想しか書けませんが、すっごく好きな1冊です。
投稿: hanemi | 2005.12.06 15:54
さかなさん
すてきな「場」を提供してくださって、ありがとうございました!
それと、七転八倒した本でしたので、さらりと気持ちよく読んでいただけたとうかがって、これほどうれしいことはありません。
サカモトさん
押入れをひっかきまわして出てきた「ジョーアンドミー」、明日、送りますね。
おかげさまの一冊、でしたから。
それにしても、あれからもう7年! 早いものです。
t-mitsuno
投稿: t-mitsuno | 2005.10.16 10:41
サカモトさん
あぁ、そうだったんですか!
すごくよかった。手元に置けてうれしいです。まだ本棚にいれず、近くにおいてパラパラと読み返しています。
t-mistunoさん
トラックバックもありがとうございます。
ジョーの語り口、ヘインズの語り口、いずれもしっくりなじむすてきな訳でした。好きなことを好きと書くのは思い入れが入ったりしますが、これほど、気持ちよく書かれていると、読者はただ楽しめる。これはすごく心地よいことです(^^)
投稿: さかな | 2005.10.16 09:37
mitsunoさんだ〜。
本当にいい本でしたね。
・・・と、訳者と編集者で言っていても説得力ないのね(笑)。ブログでお目にかかれたなんて、うれしいです。
投稿: サカモト | 2005.10.15 09:20
読んでくださったんですね!
思春期の男の子が主人公(エッセイなので主人公はちょっとへんですが)の、日本語にするのがとてもむずかしい本でした。でも、とっても好きな訳書です。
コネチカットの四季を順に描いていく構成になっているので、訳している最中は、ある一年のことをつづったものかと思っていました。ところが、訳し終わって筆者に電話したら、じつはヘインズと出会った15歳から大学卒業直前までの数々のエピソードを構成し直したことがわかって。
文体で苦労したのは、そういうこともあったからかなと思いました。日本語って、少年と青年では語り方がまるでちがいますでしょう?
サカモトさんは、私が七転八倒したのをよくご存知です。トラックバックをつけた記事は、やはりサカモトさんが編集なさった、翻訳者にとってすごくありがたい本についての日記です。
投稿: t-mitsuno | 2005.10.14 12:06
わ〜、なつかしい。
フリーランスになってほぼ初めての翻訳書のお仕事だったような……。
わたしも、かなり好きな本です。
なぜか見あたらないので、もう一度手に入れておかなくっちゃ。
投稿: サカモト | 2005.10.14 11:15