力関係
スキャンダルという言葉にはどうも人の耳をピンとたてさせる力がある。なになに? なにがあったの? 下世話なことと思いつつ、聞いてみるとやっぱり聞かなくてもよかったなと勝手なことも思うのだが。
書名『あるスキャンダルについての覚え書き』(ゾーイ・ヘラー 栗原百代訳 ランダムハウス講談社)も、好奇心をそそる響きがあり、帯がまたその好奇心を後押ししてくれる。
物語を語るのは教師生活を21年送ったあと退職したバーバラ、覚え書きの主人公はシバ、42歳の陶芸教師。教え子の少年との“不適切な関係”により、シバは家族から離れ、バーバラと避難生活をおくる。バーバラはシバに、なぜそんなことになったのかと、聞き出したことを書き留め「これは私の物語ではない」とことわりをつけ、語りはじめた……。
何が書かれているのかという好奇心は、しだいにゾクッとする怖いに変わった。バーバラはシバの事を書きつつ、書かれることで見えてくるのはバーバラの深層だ。バーバラが自分自身であらんがための、意識的であり無意識である支配力を行使する姿は怖い。その怖さは身に覚えのある怖さだ。この支配力が時に蜜の味だということを、少なくない人たちが知っている。

コメント