われわれの時間
一日で、いちばんいいのは
宵の時間じゃないか? いいのに、
それほどは愛されていない時間。聖なる
休息の、ほんの少しまえに来る時間だ。
仕事はまだ熱気にあふれ、
通りには人の波がうねっている。
四角い家並のうえには、
うっすらと月が、穏やかな
空に、やっと見えるか、見えないか。
その時間には、田園をあとにして、
おまえにいとしい街を愉しもうではないか。
光に映える入り梅と、端正に
まとまった容姿の山々の街を。
満ちたりたぼくの人生が、
川が究極の海にそそぐように、流れる時間。
そして、ぼくの想い、足早に歩く
群衆、高い階段のてっぺんにいる兵士、
がらがらと行く荷車に、駆けだして
跳び乗る少年。そのすべてが、ふと
静止するかに見えて。これら生の営みが、みな
不動のなかにたゆたうかに見えて。
偉大な時間、収穫をはじめたわれわれの
年齢に、よりそっている時間。
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