特急キト号
『特急キト号』 ルドウィッヒ・ベーメルマンス 作 ふしみみさを 訳 PHP研究所
アンデスの土で描かれたような、このかわいらしい絵本(訳者あとがえきより)――
表紙を見て、なんてあったかい雰囲気!と感動したのですが、なるほど、この茶色のあたたかみは、アンデスの土色だったのですね。原書が刊行されたのは1938年。その前の年に、作者ベーメルマンス(そう、「マドレーヌ」シリーズの!)は、エクアドルに旅し、この絵本のタイトルになった特級キト号に乗ったそうです。
アンデス山脈のふもとの村にすむペドロ。まだ赤ちゃんとも言える男の子ですが、汽車を見るのが大好きです。赤い機関車がやってくると、自分の着ている赤いポンチョをはためかせて喜び、夢中で眺めます。ある日、お母さんが駅のそばにある市場で仕事をしていると、ペドロは思わず……。
うすいクリーム色の紙に、茶一色で描かれたベーメルマンスの絵。のびやかでとてもきれいです。ほんの少しだけ長いお話で、まんなかの子が最後のオチをお兄ちゃんに聞いていました。一度読んだだけでしたが、上の子はよく理解して弟に教え、「ぼくのいちばん好きな絵はこれとこれ」と話がつながるニワトリの絵のページを指していました。さて、ニワトリとペドロはどうつながるでしょう?
訳者あとがきでふしみさんが丁寧にベーメルマンスの生い立ちについてもふれています。オーストリアで生まれた彼がどうしてアメリカに渡ったか。絵本を描くきっかけは、などなど。紹介しているベーメルマンスと娘さんの会話には思わずにっこり。
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