新しいレンズ
「図書」11月号より
アーサー・ビナード 鮭と星々と死者たちの向こうに、から
マーウィンの観察眼は鋭いだけでなく、常に人間の枠を超えた広がりを秘めている。ただし派手に人間をかなぐり捨てようとはせず、少しも力まずに、さり気ない比喩で読者に新しいレンズを与える。例えば"Separation"では、別離の悲哀を味わっている自分自身を、刺繍の針の目を通して見つめた。
離れているとき
ここにあなたがいないことが、針に通した
糸のように、私の中を貫く。何をやるにも
その縫い目が増える。いないあなた色で。
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