松浦氏の古書店
楽しみにしていた雑誌「群像」の連載“僕の古書修行”が最終回だった。カウブックスの松浦弥太郎氏が、雑誌「暮らしの手帖」の新編集長になるというニュースを知り、へぇと思っていたのだが、この文章を読んで、なるべくしてなったのだと、今更ながらに知った。
連載の古書修行は、アメリカでの古書の入手に関わるエピソードや、名物古書店の店長からの古書をもつにはと伝授された話やら、興味が尽きない話ばかりだった。最終回では、連載中、幾度も登場した、師匠A氏が松浦氏に、随筆専門の古書店を続けていくのであれば、「暮らしの手帖」に掲載されている作家の随筆を基本にすればいいといい、創刊号から10号を手渡す。「ここに載っているのはどれもが暮らしを題材にした随筆ばかりです。だから誰でも楽しく読める。そして時代を超えて読んでも面白い。なぜかと言うと、随筆は本当にあった事実を書いた文学だからです」
これに対して松浦氏が書かれたものを少し長いが引用する。
常に工夫すること。発明すること。新しい知識を見つけること。何か必要であったら、すぐに買ったりせずに、自分で作れないかと考えること。物を大切にすること。暮らしや仕事は、工夫と発明、発見で成り立っていることなど、実を言うと僕は、そういった心持ちを花森安治の書いた文章や『暮らしの手帖』から強く影響を受けていた。祖母の家で出合い、その後もいろいろな場所で手に取っては、巻末の「編集者の手帖」という大橋鎮子による編集後記や、特集の見出しに書かれた花森安治のメッセージから、時代の新しさや、生きていく私信のようなものを受け取っていたのだ。その先に、今僕が続けている古書店の仕事や執筆活動があると言ってもひとつも嘘にはならない。
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