地上で読む機内誌
目当ての記事が読みたくて、地元書店をまわってみたけれど置いていなかったので、オンライン書店で購入。雑誌もオンラインで買えるなんて。便利になりました。
で、目当ての記事は内容的に知っていることばかりだったので、ちょっぴり落胆。でも他の記事がおもしろかったので、やっぱり手元にきてよかった。
地上で読む機内誌、ペーパースカイ。今回号の特集はロンドンなのだけど、おもしろかったのは、柴田元幸の文学旅行なのでした。折しも、この雑誌での短篇集をまとめたものが新刊として出たばかり。
今回号でとりあげた短篇タイトルは「!」の一文字。作者はリン・ディン。原文と並記して訳文が書かれていて、レイアウト、イラストすべてに調和がとれていて、極上の読み心地なのだ。
ホー・ムオイはまた、もし戦争が地上から書物を一冊でも消滅させてしまうなら、その喪失は無駄にされた生命すべてよりも大きいのだという迷信に(あるいは霊感に)囚われていた。一人の人間の死は、せいぜい三、四人の心に影響を及ぼすにすぎず、その意味は抽象的かつ感傷的なものでしかない。だが、一冊の書物の消滅はもっと具体的であり、全人類によって永遠に悼まれるべき大惨事なのだ。ひとつの社会の値打ちは、その社会が生み出した本の数によって測られる。……といったことを、実際に本を読んだことは一度もない人間が考えたのである。本などろくに見たこともなかったから、さまざまな本を区別しようもなかった。彼の頭のなかですべての本は等価であった。戦争こそ本を生み出す主たる要因ではないか、などとは考えもしなかった。戦争とは考える人間の大学である。
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おぉ、読まれていたのですね。そう、例の部分は目新しいことがなにひとつなかったですね。この柴田さんの本、おもしろそうです。きっと近々読もうと決意。
原文と並記しているものは、美しくなく感じることが多いのですが、これはそういうこともなく、なるほどーとうならせてもらうものでした。
投稿: さかな | 2006.12.07 21:29
これ、わたしも本屋で一冊だけあるのを見つけて、例の部分だけ立ち読みし、てんで目新しいことは書いていないや、とがっかりして、そのまま立ち去ったのでした(さかなさんにお知らせしようと思って、それもたぶん忘れていたような、、)。
あー、やっぱり買えばよかったぁ、と後悔です。このシバタさんの本、面白そうですね。
投稿: 上野空 | 2006.12.07 20:47