ないしょ
友人のブログでいい詩集を教わった。注文して届いたら、予想にたがわず美しいたたずまいの詩集で、ほくほくとうれしくなった。限定三百三十三部、私のは八十八。
『ないしょ』(伊藤茂次詩集/龜鳴屋)より
運命
インスタントコーヒもなくなり
飴もなくなり
ビスケットははじめからなく
ある物は僕の肉体と
名前と淋しく呑気な
精神は苦労する
精神が無かったら死であろう
困ってもあったほうがいい
死んだ人間は痛いとも
すまないとも云わない
生きているから困った者になってしまったと
思い
それが普遍化して
困った人間だとなるのである
僕が小学生の頃義母は
海産物屋になりなさい
かならずもうかる
海産物屋には夏も冬もないから
僕は小学校しか出ていない
義母は活版屋になったら字を
覚えるから
字を覚えて偉くなった人がたくさんいる
本屋の店員、軍人になって偉くなった人もたくさんいる
然しみんな死ぬのだ
小林秀雄が生き返って酒を飲んでる
とは聞いたことがない
本居宣長が生きているうちに
派手な葬送をしたらしいが
死んだ人間が俺は幸福だったと
生き返ったためしがない
欲望は
『欲望と云う名の電車』だけで充分だ
僕はでくの坊でいい
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Gelsominaさん
ふふ、Gelsominaさんの番号もいいですよね。おかげさまで素敵な詩集を手に入れられました。うれしいです。
上野さん
そうそう、ここの出されている本、どれもよさそうなんですよね。文字は活版印刷と書かれてしまうと、すてきだ!見てみたい!と思いますもの。室尾犀星さんのなんて美しい本ですよね~。
投稿: さかな | 2007.06.04 07:38
詩もいいですが、この出版社の本も、、、、ついついいろいろ見入ってしまいました。またも物欲がむくむく、、、。
投稿: 上野空 | 2007.06.03 17:48
こんにちは、さかなさん
お、さすがにいい詩を引用されますね。わたしは67番でした。ロクデナシ。さかなさんは88でなんだか縁起がいいですね。
投稿: Gelsomina | 2007.06.03 17:30