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2007.07.31

切実さ

群像 2007年 07月号 [雑誌]  

 津島佑子さんが小説についての切実を語り、伊藤比呂美さんが詩について語る。残る言葉がいっぱいある対談で、昨夜読んで今日も何度も読み返した。
 対談というライブの記録だけでなく、津島さんは対談後にあえて追記を書き、伊藤比呂美さんもまたそれに応えているのが深く響いて心に届く。少しだけ引用。

 ただ私が気になるのは、「詩的な小説」――目的や対象を曖昧にしたまま、情緒的な文章で読者の関心を引くたぐいの小説が、今の時代、好まれる傾向にあるように見えることなのです。一歩まちがうと、ただの「まがいもの」になる危険がそこには待ちかまえています。主観的な情緒が優先されると自己正当化が働き、みんながイノセントな正義の味方になっていく、そんな今の日本の現象と、「詩的な小説」は無関係ではないと感じさせられています。「詩的」であることは、実際には「聖」に近づくことではないでしょう。
 私はもともと「小説」という散文形式が持っていた、言葉の魔力に対する「人間の抵抗」という、おそらくは、ひどくはかない行動を、あえて大切に考えておきたいと願っているのです。

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コメント

野々宮さん

私もこの対談を読んで、津島さんの仕事を読みたくなったのです。

大江さんと長嶋さんの対談は、5月頃行われたものの収録だそうですが、こちらもとても読みごたえがあり、抜き書きしたくなるところがいっぱいありました。

そしてまた、最近対談目当てで文芸誌を読むなぁと思ってもいたのです。

「文學界」8月号は、小川洋子さんと川上弘美さんの対談と、河野多惠子さんと、山田詠美さんのこちらは対談ではないですが往復書簡をお目当てに購入しました。でも、もっと文芸を楽しませてもらわねば、ですね。

「群像」7月号を、近隣の図書館で借りることができました。
今読んでいる最中ですが、津島さんと伊藤さん、ふたりが自分の現場で、言葉と四つに組んでいるさまが伝わってきて、しかもそれが書く喜び、生きる歓びと直結しているのが羨ましい。津島さんの台湾や、カムイユカラへの関心も、彼女が生きる根っこと関わっていて、天翔けながら、しっかり地面も踏んで書くことを本意とする人と思ってきました。この人の仕事を、もっとちゃんと読みたくなりました。

同じ号の、大江さんと長嶋有さんの対談も気になります。文芸誌が、こんなに対談を売りにしていいのかなという気もちよっとしますが。

野々宮さん

この対談の中で、うっかり小説を書いてしまい『河原荒草』を書けた時はとても気持ちがよかったといわれています。この対談もぜひ。

平田俊子さんや小池昌代さんもそうですね。今回の対談を読み、どの立ち位置に自分がいるかということが腑に落ちました。言うほどの自分があるわけではないのですけれどね(笑)。

おもしろい話をして笑いで人を惹きつけるのはすごいことですが、真摯な言葉ほどそれを欲している人を惹きつけるものはないのではないかと、そんなことも思いました。

こんばんは。ご紹介ありがとうございます。
時々テープリライトの仕事をしています。津島さんの講演のテープ起こしを依頼されて手がけたことがあり、また女性詩人で小説を書きはじめた、平田俊子さんや小池昌代さんの仕事(詩・散文とも)にも親しんでいるので、とても気になる対談です。早速読んでみたいと思います。
伊藤比呂美さんの『河原荒草』という詩集は、とても、刺激的で面白かったです。

上野さま

私ごときに何がわかるってなものではありますが、「詩的な小説」については自分でも最近思うところのあることがとてもまとまった形で差し出されたようなところがあります。なので、何度も読み返しています。この津島さんに対する伊藤さんの言葉もまた心地よく重さがあり。

あくまで引用なので、ぜひ読まれて空さんの感じたものもお聞きしたいです!

これもすごい言葉ですねえ。mixiでのご紹介を読んで、わたしも「詩的な小説」のことがぴんと頭に来ていたんです。
これはぜったいに読まねば!!!
さかなさんの鋭いアンテナ、いつもながら、ありがたいです。

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