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2007.10.15

月のうた

Tsuki 民子さんという、いまどき古風な名前の少女は母親を癌で亡くし、父親とふたり暮らしをしていました。それから二年後、父親は会社の同僚と再婚します。宏子さんという女性は、よくいえば天真爛漫、ひねたいいかたをすれば、人の気持ちをくむのが下手です。民子さんは、おばあさんから厳しく躾けられたことこもあり、宏子さんのおおざっぱさについていけない時もあります。けれど、宏子さんが気持ちのよい人だとも気づいていくのです。

 静かでまじめな小説です。
 物心ついてから、新しい大人を家族に迎えるのは、へんなたとえかもしれませんが、嫁と姑がおうおうにしてぎくしゃくするように、むつかしいものだということは想像できます。民子さんが、小学6年生の時に迎えた新しいおかあさんと、日々の生活、とくに食卓を囲むところで気持ちがささくれるのは、切ない場面でした。おみそ汁の出汁、お番茶、おせち料理、いろんな場面で、民子さんは逡巡します。どの描写も、地に足のついたもので、静かな筆致ながら輪郭のしっかりした物語が心に届く心地よさがありました。

 第2回ポプラ社小説小説大賞優秀賞作。
 『月のうた』 穂高明著 1260円(税込) ISBN 978-4-591-09955-1
 ポプラ社月刊誌「asta*」11月号では、著者インタビューも掲載されています。

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