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2007.12.29

さようなら

考える人 2008年 02月号 [雑誌]

 お会いしたこともない、はるか遠い彼方の人なのだけれど、私は子どもの頃からこの方の懐深い笑顔になじんでいたような気がするのです。復刊される前の雑誌「飛ぶ教室」でだったと思います。そして復刊された「飛ぶ教室」でも来月号ではやはり追悼号が出るようです。ひとあし早くでたのは「考える人」でした。

 追悼号というのは、ゆかりのある人たちが思いのたけをこめて書かれた文章が載ります。梨木香歩さんが、河合さんに書いた物語を読んでもらったことがきっかけで世に出たことは知られた話ではありますが、この雑誌で初めて公的にそのことを書かれています。

 文章というのは本当に不思議なもので、そしてよく言われていることですが、気持ちが透けて見えます。梨木さんの気持ちがとてもよく見えてくる文章が書かれていました。

 人と話をするのはとても楽しいものです。私の古い知人が娯楽の最たる物は友人との語らいだと言っていました。これが何より、と。本を読むことはその語らいでもあります。直接の面識がなくても、時として、深い語らいを本とできるものなのです。いえ、本に限らず、雑誌という形の中でも。最初の「飛ぶ教室」を読んでいた頃は、まだまだ子どもの私が、世の中には子どもを知ろうと、また子どものことをなかなか知っている生身の大人がいるんだと知る場でもありました。そういう大人のひとりが河合さんだったのだと、「考える人」という雑誌を読みながら思いました。

 どの方の追悼の文章も胸を深くうちました。それを読んだ昨夜はたくさんの夢をみました。

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コメント

空さん

 レスが遅くなりすみません。今年も空さんとの刺激ある「本語り」を楽しみに楽しみにしています。さて、読み初めは『オン・ザ・ロード』になりそうです。今年もよろしくお願いいたします。

「本を読むことはその語らいでもあります。直接の面識がなくても、時として、深い語らいを本とできるものなのです。いえ、本に限らず、雑誌という形の中でも」
こういう姿勢が、さかなさんの、いつも暖かい書評につながっているのだなあと、なんだかしみじみ思いました。本と語り、著者と語り、そしてそれをこうしてブログで話してくださるさかなさんの「本語り」、来年も楽しみにしています。

野々宮さん

 「飛ぶ教室」を読んでいると、上野さんや河合さん、そして清水さんは身近に感じますね。そのお気持ちよくわかります。それにしても卒論で上野さん! 『さらばおやじどの』は私にとって非常に大事な一冊です。
 児童文学関連の雑誌、同人誌は他にもありますが、「飛ぶ教室」の魅力は、集っている人たちの魅力でもあったのでしょうね。
 梨木さんや江國さんは、少しだけ上の世代です。でも、おふたりともデビュー時からずっと読んでいる作家なので、そういう意味では同世代に近いのかもしれません。

 私も河合さんの講演を一度だけ聴いたことがあります。患者さんになりたいなあと願ってしまいました。

 野々宮さん、一度お会いしたいです。心から。

BUNさん

 光村図書から出ていた「飛ぶ教室」は1981年に創刊されています。梨木さんは、「飛ぶ教室」からのデビューではなく、ほぼ10年後の1994年にデビュー作が刊行されていますね。「飛ぶ教室」では江國香織さんが「桃子」で活字デビューしています。1981年といえば、四半世紀前ですもの。まだまだガキんちょです。でも、リアルタイムに創刊号は読んでいません。追いついて読んでいるのは、1985年くらいかしら。でもプチ自慢ですが、「飛ぶ教室」は非売品の0号からもっていますので(笑)、0号、創刊号で編集人であった河合さんと長さんの豪華対談も読んでいます。そう、ずっと対談をされていますね、河合さんは。人の話を聞くプロだったとあらためて思います。『明恵~』は未読なので読んでみようと思っています。

さかなさん
この追悼号の感想を待っていました。わたしもこれから読むつもりでいます。
初期の「飛ぶ教室」とは学生の時に出会いました。卒論で上野瞭論を書いた縁もあり、河合隼雄さんや清水真砂子さんの発言は、いつも身近でした。河合さんも、上野さんや今江さんもちょうど親の世代です。梨木さんや江國香織さんは同世代。親を見送るような気持ちですね。

河合さんの講演を聴きに言った時、開場からのどんな質問にもみごとに応じる姿勢に、プロとしての姿勢と懐の深さを感じたのを思い出します。

さかなさん
うわ、「飛ぶ教室」で梨木さんがデビューしたころ、さかなさん、「子ども」だったんですかー? リアルに年の差を感じました(笑)。「考える人」昨日さがしたけどなかった……こんど、別の書店でさがしてみます。いい写真ですね。
友人との語らい、ということで言えば、河合さんは、ほんとうに「対話者」だったと思います。『あなたが子どもだったころ』をはじめ、対談集はどれもすごく面白かった。あと『明恵夢を生きる』も、ある意味で、明恵上人との対話なのかもしれないなあと、今思いました。わたしにしてはめずらしく読み返した本で、それでもよくわからなかったのだけど、でも深く心に残っています。

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