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2008.01.08

潜水服は蝶の夢を見る

潜水服は蝶の夢を見る
ジャン=ドミニック ボービー 河野 万里子
講談社 (1998/03/05)
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 2008年2月から映画公開される原作。映画は2007年カンヌ映画祭監督賞および高等技術賞を受賞している。映画公式サイトの予告編をみてから、本をぱらっと開いて読み始めたら、言葉の力にひきつけられ一気に読んでしまった。おもしろいタイトルだと思って惹かれていたのだけれど、これほどの意味をもった言葉だとは。読了してはじめてタイトルの意味を深く知りました。

 著者はもともとは作家ではなく、雑誌「ELLE」の編集長としてパリで活躍していた。しかし、ある日、突然の脳出血ののち、難病ロックトイン症候群とよばれる身体的自由を一切奪われた状態になる。ロックトイン症候群とは、自分の意識で身体を動かせない状態においても、意識は鮮明なのだ。自らの意識で動かせるのは、左目の瞬きだけだった。その瞬きで綴ったのが本書。

 43歳の働き盛り、恋人もいて、子どもも3人いた。仕事も順調で人生を順風満帆ですすんでいた時におそった難病。しかし、本書は、病気の痛みや苦しみ、それを乗り越えての執筆について費やされているのではなく、それまでの日々の追憶、回想、現在の思索、いずれもが、エレガントな筆致で的確に輪郭のはっきりした文章で綴られていて、ひとつひとつの文章がまるでおいしいご馳走のような味わいをもっている。構成もすばらしく、最後の二章、これを最後にもってくるという組み立て方に感じ入ってしまう。

 訳者あとがきタイトルは「魂のエレガンス」、その言葉がぴったりくる一冊だった。

 映画「潜水服は蝶の夢を見る」 [公式サイトLink]

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