やかましネットワーク
最新号の36号が数日前に届きました。
今号も読みごたえあります。
石井桃子さんへの哀悼文章、その石井さんと共に長く仕事をされてきた方の退職挨拶と共に新しく入られた方のフレッシュな挨拶。
初夏の復刊は、〈岩波の子どもの本〉で品切れになっていた15冊が復刊されるようです。センダックとクラウスコンビ絵本『おふろばをそらいろにぬりたいな』、ここ数年違う画家によっても描かれるようになった『せんろはつづくよ』(マーガレット・ワイズ・ブラウン文/ジャン・シャロー絵/与田準一訳)などがラインナップにあがっています。
少年文庫の新刊でびっくりは、『オタバリの少年探偵たち』(セシル・デイ=ルイス作)が、脇明子さんの新訳で9月に刊行されるとのこと。瀬田貞二さんの訳本は私ももっていますが、どんな新訳になるのか楽しみです。
新刊では、まんなかの子どもが大好きな「きつねのフォスとうさぎのハース」の2巻目が8月に出るようで、子どもも大喜び。ちなみに「その3」にも続くとか。わぁい!
夏刊行予定で注目読み物は『縞模様のパジャマを着た少年』(ジョン・ボイン作/千葉茂樹訳)。原書タイトルは"The Boy in the Striped Pyjamas"(John Boyne[作者公式サイト])で、2006年度カーネギー賞のロングリストに入った作品。
作者は1971年生まれのアイルランド人。内容は、「第二次世界大戦時におきた最大の悲劇のひとつ、ユダヤ人強制収容所を背景したフィクションです。ふたりの少年の物語は読む者にある問いを強烈に突きつけます。フェンスのこちら側とあちら側を隔てるものは何なのか、と。(やかましネットワークより)」。また、映画「ブラス!」などの監督、マーク・ハーマンにより映画化され、今年公開予定。日本での公開もまたれるところ。
岩波書店の読み物では楽しいものもたくさんありますが、深く考えさせられる戦争関連の物語では5年前に刊行された『走れ、走って逃げるんだ』(ウーリー・オルレブ作/母袋夏生訳)があります。この物語は、作者オルレブが、ヨラム・フリードマンという人から聞いた子ども時代の話を書きまとめたもので、ワルシャワ・ゲットーの住民たちが狩りあつめられた時、8歳だった少年は生きるために、走って逃げて生活していきます。過酷な少年時代が描かれているのですが、生きることについて深く残りました。
アーディゾーニの挿絵、いいですよね。少年文庫のラインナップは歴史を感じます。瀬田さんの翻訳も別の方による新訳になるのかと、脇さんならすてきに訳されるだろうでしょうね。いまの子どもたちが、どのように読むのか、まずはわが家の子どもたちに読んでもらいたい。
千葉さんの訳される本はどれもいいですよね。絵本も読み物も。私も『みどりの船』は大好きです。ああ、素敵な老婦人、おられましたね。読み返さなくちゃ。
投稿: さかな | 2008.06.17 20:45
『オタバリ』はアーディゾーニの挿し絵も含めて懐かしい本です。カッレ君とも、ケストナーのエミールとも、大人になってから出会いましたが、大学の図書館で少年文庫をひっかえとっかえ借りるのが楽しみでした。いまの子ども達が、これらの本といい出会いができるといいなと思います。
千葉茂樹さんは、クェンティン・ブレイクの『みどりの船』で出会って以来、いつもいい本を選んで訳されているなあと感心しています。『みどりの船』で、嵐の中、背筋をのばして舵をとりつづけた、素敵な老婦人がわたしは大好きです。
投稿: 野々宮 | 2008.06.17 20:05