夏から夏へ
オリンピックの400mリレー決勝後の夜中に注文。ベストセラーになり、映画にもなった『一瞬の風になれ』(講談社)を書いた佐藤多佳子さん[Link]が、今度は高校生ではなく、4継代表選手たちを取材して書いた著者初のノンフィクション作品。
2007年8月に行われた大阪世界陸上で決勝を走ったメンバー、塚原直貴、高平慎士、末續慎吾、朝原宣治にそれぞれ話を聞いてまとめたもので、リザーブの小島茂之の話(ここがとてもいい!)もおさめられている。
第一部は世界陸上大阪大会を。スタート前の第1走から4走まで、それぞれの彼らの心情をクローズアップする。予選、そして決勝。ライブでみているかのように、肩に力をいれて読んでしまう。[第一部冒頭を版元サイトにて、試し読みができる → Click]
第二部は、大阪での世界陸上が終わり、スプリンターの彼らがどんな練習をし、次の夏を迎えようとするのかが、9つの章立てで書かれている。
今回の取材を通じて、何人ものスプリンターと話す機会を得たが、どの人も、恐ろしく頭がいいとつくづく思った。物理学的に難解なスプリント理論を頭に入れて、自分なりに工夫してアレンジして、または新しく生み出して――そんなことがやれるのは半端な頭脳ではない。でも、そういうことより、マクロとミクロの思考の使い分け(物事を大きくとらえて俯瞰するか、顕微鏡で調べるように細密に検証するか)、様々な状況判断、言葉の選び方など、現実に即した有用な知性をふんだんに持っている。生まれ持った肉体とエネルギーを完全燃焼させて優劣を競うように見えるスプリントだが、あるレベルを超えるとフィジカル以外の多くの能力が必要とされるので、”頭がいい”などは当たり前なのだろう。
第一部の臨場感に対して、第二部は人となりがみえてくる。第二部を読んでからまた第一部を読み返すとまた見方が変わって深く読める。
よかった。
「夏」をもうひとつ書いてほしい。
くるりさん
順番がくるの、待ち遠しいですね。
おっしゃるとおり、リレー、特に400継は、高速リレーになるのでバトンパスの技術が必至。大舞台でそれを成功させるかがメダルへの道だったのでしょうね。
大阪で行われた世界陸上のシーンの描写もすごくて。これだけの最高の走りをもってしても、と。
早く読んでくださーい
投稿: さかな | 2008.08.30 16:35
オリンピック前に図書館に予約を入れたのに、まだ待機中です(ぐすん)。決勝前に読みたかった。
買えばよかったなあ。
リレーは、単純に距離×人数ではなくて、「○メートルリレー」というまったく独立したひとつの競技だと思っているので、その技を日本チームがどう究めていったのか、非常に興味があります。
早く順番こないかなあ!
投稿: くるり | 2008.08.29 21:02
BUNさん
ちなみに今日(26日付け)の読売新聞に佐藤多佳子さんが400継について書かれています。サイトの日記とだいたい重なっていますけれど。
そう、白い表紙なので、読んでいる時はカバーをはずして読んでいました。あまりにも白いので、汚せないと思ってますよね。一緒に決勝をTVで観たつれあいがいま読んでいるところ。「おもしれー!」と夜更かしして読んでます。
それと、そうなんですよね。三人称の部分とそれ以外の部分のギャップ(?)に、とまどうのですが、根底にあるミーハー魂に共感すると、すなおに読めました。
練習の組み立て方とか、ほんとうに4人それぞれで、高平さんのブラックな言い回しにけっこうぐっときました(笑)。塚原さんが朝原さんに父ちゃんって感じで抱きつくところもいいですし、塚原さんが恩師に会社の入社式が終わったことなんかを、ちょこちょこ電話するところも。末續さんは、調子悪そうな描写になるとドキドキしました。朝原さんのご両親の談話もよかったなあ。あ、結局、ぜんぶよかったんですよん、へへ。また再読しようっと。
投稿: さかな | 2008.08.26 11:35
ちょうど今読んでいるところです! 第1部を読み終えて、おもしろくておもしろくて。ただ、白いきれいな表紙なので、コーヒー飲みながら読むのがちとこわいっす(笑)。
インタビューを元に構築した三人称の部分と、実体験の「わたし」で書かれている部分の落差がはげしくて、あれれっ!?という感じもするのですが、そこら辺もまた愛せるというか。『一瞬の風』の何年間かの積み重ねがあってはじめて、あれだけ奥深くまでインタビューで入り込み、さぐることができたんでしょうね。ただ速い人を四人並べればいいってものではない、リレーチームならではのあり方が深くわかっておもしろいです。
投稿: BUN | 2008.08.26 10:12