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2008.09.14

ルウとおじいちゃん

ルウとおじいちゃん

 たしかに、おじいちゃんは詩人だ。ちょっと変わった詩人だ。だって、自分の詩をどこにも書きとめてはおかない詩人なんだもの。おじいちゃんは詩を頭のなかの安全な場所にしまいこみ、宝もののようなイメージを、自分の庭の光につつまれている王子さまみたいに、あたしたちにも分け与えてくれるのだ。

 

 「お日さまが、ゆっくりと草原におりていく
 長い肢、すらりと伸びた首の
 あざやかな色の女王たちが、遠くからやってくる
 ゆらゆらと歩きながら夢を見ている。」

 

 ルウのおじいちゃんはすてきだった。おばあちゃんはしあわせのため息をつきながら、おじいちゃんの言葉を聞いて「詩人だからねえ」としみじみ言うくらいに。そして、おじいちゃんはおばあちゃんを深く愛し大事に思っていた。それなのに、別れは突然やってきた。ある日、お昼寝からおばあちゃんは二度と目をさますことがなかった。いきなりの別れはおじいちゃんを変えてしまった。もう言葉をつむがず、それどころか、いっさい口をきかなくなってしまった。ママはおじいちゃんをホームにいれることを決意する。でも、ルウは納得できない。そこに入ったらおじいちゃんは、元にもどってくれない。だからルウは行動を起こした……。

 読みながら、私もひとつの別れを思い出した。20年近く前、一緒に面打ちをしていたTさんは80歳。面打ちの時間が終わると、孫のような年齢の私を「葡萄酒を飲みに行こう」と誘ってはいろんな話をしてくれた。私が結婚でその地を離れてしまってからは、Tさんとは電話で話すだけになり、その間、Tさんは最愛の奥様に先立たれた。ひとりになったTさんに、周囲はやはりホームをすすめたのだが、お孫さんのひとり(女の子)が、「おじいちゃんは、ホームにいれたらぜったいダメ!」と強行に反対し、住み慣れた家にいたかったTさんはその言葉に元気づけられ、近所の方に1日に数回様子をみてくれ、ごはんを届けてもらえるような環境をつくり、一人暮らしを続けたのだ。「あの子のおかげで、家にいられる」と私にも電話で話をしてくれた。

 日々働いている大人には、あれこれと助けられない事情がある。そういう意味でもホームがひとつの選択肢であることはもっとも。それでも、冒険をおこせる者がいれば、現状を変えられる、かもしれない。ルウのおじいちゃんに対する、深い深い愛情が、どんな行動を起こし、どんな変化を起こせるのか――。

 とてもとてもいい本です。

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コメント

青嵐さん

ありがとうございます。TB成功したようです。FireFoxにGreasemonkeyを入れているからなのか、下のトラックバックの表示がされなく、IEだと出ました。うーん、不思議。

なにはともあれ、成功してよかったです。また遊びにいきまーす!

早速のお立ち寄りとコメントありがとうございました拙記事のトラックバックURLです。
http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/10148412447/254915e2

青嵐さん

コメントとTBありがとうございます。
私もTBを、と思ったのですが、どうにもこうにもTBのurlを発掘することができませんでした。よろしければ教えてくださいませ。

青嵐さんのブログコメントにも書いたのですが、この本、ほんとうにいいですよね。私も一気読みでした。藤本さんの訳書はどれもすてきなので、これからも要チェックですね。

はじめまして、さかなさん。青嵐と申します。
先日書店の本棚から「読んで~」とメッセージを送ってきたこのコを手に取り即日読み終えました。
素敵な本だったので他に読まれた方を検索してこちらへたどり着きました。
また時々お邪魔させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします

ぶなの木さん

老後、そんなに遠い先ではないですものね。それより先に親も老いていきますし。

石井桃子さんは亡くなる直前までお元気でしっかりされていて、とうかがうと、そんな風になりたいなと思ってしまいます。

ところで、『100歳の美しい脳』によると、たくさんの本を読み聞かせてもらった脳はアルツハイマーの脳になっていても発症しにくいそうです。物語の効能なのでしょうか。

さかなさん、
ちょうど、昨日、小学校の時の恩師に会ってきました。
2年くらいに一度会うくらいでしたが、久しぶりに連絡とったら、体を悪くされて、今、グループホームにいらっしゃるということで、お月見のお菓子をこしらえて持って行きました。
思っていたより、お体は元気そうでしたが、ときどき、話がかみ合わなくて、・・・なんか切なかったです。

自分たちの老後について、いやでも考えてしまいました。

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