韓国の童話シリーズ
現文メディア[サイトLink]発行、理論社発売の韓国の童話シリーズをつづけて4冊読みました。てらいんくのアジア文芸シリーズや汐文社からも出ていますが、いまの空気がいっぱいの韓国童話、どれもおもしろかったです。
チャリンコ・ヒコーキ・ジャージャー麺 (韓国人気童話シリーズ1) (韓国人気童話シリーズ 1)
イ・サンペ文 ペク・ミョンシク絵 高橋宣壽訳
不勉強ながら初めて知った、韓国の「少年少女家長制度」。これは、両親が亡くなったり、離婚、病気、家出、服役などをしたりすることにより、家庭に生活能力がなくなった場合、その子どもである満二十歳未満の少年少女が、家長となるのを法的に許可する制度。(本文p3より引用)この制度があると、兄弟がバラバラにならずに生活することができるのです。 このお話は、両親を病気で相次いで亡くしたきょうだいが、家長に申請を出し、兄が弟、妹と助け合って生きていく姿が描かれています。サイダーを思う存分飲みたい、ゲームをやりたいという弟や妹らの欲望もが身大で描かれ、特に兄が「兄弟げんかは絶対するな」という父親の言いつけを守る姿は、人を育てる原点をみるようでした。新聞配達や洗車で稼いだお金で弟や妹に何をするか。胸がいっぱいになりました。
心に刺さったガラスの破片 (韓国人気童話シリーズ2) (韓国人気童話シリーズ 2)
ファン・ソンミ文 キム・ユデ絵 高橋宣壽訳
両親が働いて鍵っ子の兄弟。学校帰りの買い食いや、ミニカーを買ったりするお金がほしくて、弟のウンギョルはある日、こっそり母親の財布からお金をぬきとるのですが……。 兄弟げんか、両親と子どもたちのやりとり。どれも、日本の家庭でもよく聞かれる、近しい感じがあります。とくに会話は活き活きしていて、いずこでも親の悩みにゲームのやりすぎがあるのねと、共感しきりです。兄はテコンドーをしているのですが、その大会の様子は柔道をしている上の子にも「このお父さん、うちのお父さんとにてるね」とやはり共感があったようです。兄の立場からみた弟、弟の立場からみた兄、両親の子どもへの愛情、読みやすい文体でいっきに読みました。この本は私が読むより、上の子が読んだので、読了後、ひとしきり感想を交換できたのも楽しかった。つれあいもそれをおもしろそうに聞いていましたね。
帰ってきた珍島犬ペック 韓国・忠犬ハチ公物語 (韓国人気童話シリーズ3)
ソン・ジェチャン文 ソン・ジンホン絵 榊原咲月訳
実際にあった話をもとにしたもの。珍島犬(チンドケン)は“小さな島であるがゆえに、ほかの種類の犬と交わることが少なかったため、昔から特別な犬とされてきた”そうです。特に、飼い主との絆が強い犬といわれ、このお話も、飼い主がさまざまな事情から手放した犬、ペックが300km離れた場所から主人の元にもどってきたことが描かれています。犬の視点から感傷的にならずに書かれていて、手放すつらさ、事情もしっかり伝わり、ペックの愛しさがつのります。
星と話す少年 (韓国人気童話シリーズ4) (韓国人気童話シリーズ (4))
ペ・イクチョン文 チェ・チョルミン絵 吉田昌喜訳
ファンタジー作品。重たい腎臓病をわずらっている少年が、父親からの誕生日に天井にはる星をもらう。10歳の誕生日なので、10個の星のはずが、なぜか9個しかない。するとその夜、ダニーと名乗る星が少年に話しかけます……。 ラストはすこし強引な感じもしますが、闘病の少年、見守る両親、力づける星のダニーと、みなの誠実さが心に残る話でした。
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NONさんも初めて知りました? 子どもを家長として認めるというのは、大胆で考えもしなかったですが、兄弟がばらばらにならないというのを何よりにして考えられたのでしょうね。生活は決して楽ではなく、この物語もせつないですけれど。。
投稿: さかな | 2008.11.05 22:15
「少年少女家長制度」わたしも初耳です。儒教にねざした考え方なのでしょうかね。家族を大切にする文化がすばらしいこと、「子ども」にはできないだろうと未成年者をみくだしていないことの二つの点でいい制度だと感動しています。読まなくちゃ。
投稿: NON | 2008.11.04 13:01