ムーン・ランナー ほんとの友だちのしるし


キャロリン・マーズデン・作 宮坂 宏美・訳 丹地 陽子・絵
ポプラ社 1260円 (2008.12)
『シルクの花』(代田亜香子訳/鈴木出版)の作者による、日本で紹介される2冊目の読み物です。『シルクの花』も150ページほどでしたが、本書も、130ページちょっとで、低学年の子どもでも手にとるのに負担感のない厚みです。とはいえ、なかみは濃くて読みごたえはしっかりしています。
主人公のミーナは小学校4年生の時に、いまの学校に転校してきました。さいわい、仲のよい友だちもすぐできて、学校生活は楽しいものでした。
ある日、ミーナは体育の時間におもしろい体験をします。ランニングをしている時に、カメのような気分で走っていると、のそのそはっているようだったのに、ミチバシリをイメージしたところ、体が軽くなり足がすっすっと前に出るようになったのです。そう、まるでミチバシリのように。ミチバシリ(Greater Roadrunner:道走)は、とても早く走れる鳥なのです。Googleで検索するとこのページが写真付きで説明していました[サイトLink]。この本のカバー見返しにも白い鳥が描かれていますが、それがミチバシリです。
こうして自分が速く走れることに気づいたミーナは、仲良しグループのひとり、ルースとの関係を気にするようになります。ルースはもともと走るのが速く、近くにせまっている陸上大会でも、活躍を約束されているような子でした。ミーナはルースとの友情を考えると、速く走ることがいいことなのかわからなくなってきて……。
好きなものに目覚めたとたん、友情の悩みもできてしまったミーナ。小さなエピソードがつみかさねて、ミーナの悩みがどう着地するかを丁寧に描いています。結論を急ぐことなく見守る図書館司書のお母さん。ミーナに寄り添って読んで迎えるラストに納得です。
わが家の上の子もまんなかの子も読んだのですが、ふたりとも、ミーナとルースの友情の行く先にハラハラしたと言っていました。上の子はミチバシリってどんな鳥?と、検索し、気にしないで読み終わっていたまんなかの子も、「こういう鳥なんだ」とあらためて見入ってました。
丹地さんの表紙、挿絵、どれもすばらしいです。
訳者あとがきによると、原書の表紙写真[Moon Runner]は、作者の上の娘さんだそうです。本書は、この上の娘さんの経験を元に書かれたとのことで、別の作品では、もうひとりの下の娘さんをモデルにして、そのおじょうさんの写真が原書表紙につかわれているようで、その話も読んでみたいです。
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