ヘンリー・ブラウンの誕生日
原題は"Henry's Freedom Box"。翻訳は千葉茂樹さん。
2008年コールデコット賞のオナー作品。読者をじっと見つめるようなまなざし、表紙の中心にいる少年、ヘンリー・ブラウンの存在感は、コールデコット賞受賞作、オナー作品の中でも強烈な存在感があった。
来年には、アメリカの大統領はオバマ氏になる。オバマ氏の出自の説明でよく見かけたのが、奴隷の先祖をもたないという記述だった。いまも色濃く残るといわれている人種差別だが、この絵本は、まさにその奴隷制の話だ。
奴隷は誕生日をもたない。自分の年も正確にわからない。家族とも、いつ離ればなれになってもおかしくない状態におかれ、物のように扱われ、人として大事にされない。
ヘンリー・ブラウンもそういう奴隷のひとり。小さい時に、親から離れた所で働かされる。けれど、小さな幸せを手に入れることができた。しかし、その幸せすらも……。
厳しい実話。帯には「ほんとうにあったお話」と大きな文字で書かれている。
上の子は物語を読むと、それが自分の心に響くものであれば必ずといっていいほど、「これ、本当にあった話?」と聞いてくる。その彼がこの絵本を読み、「本当の話なんだ。ひどい話だ」と重たい顔で最初の声を出した。
版元紹介には「これは、わたしたち人間が決して忘れてはならない歴史であり、人間らしく生きる希望と誇りを持ちつづけたひとりの人間と、自由の重みを伝える実話です」とある。そう、確かに「自由の重みを伝える実話」絵本。ぜひご一読を。
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いのうえさま
コメントありがとうございます。この絵本、翻訳がしっかりしていることもあり、何度も何度も子どもと一緒に読んでいます。中学生の息子も読み返しているほど。幅広い年齢で読めるすばらしい絵本ですね。これからもできる範囲で、オススメしていきたいと思っています。
投稿: さかな | 2009.01.21 16:42
はじめまして。
ヘンリー・ブラウンの誕生日の版元で、
広報を担当しております井上と申します。
ブログに取り上げていただいて、
ありがとうございます。
重い絵本ですので、なかなか子どもたちの
手に渡るまでが難しいかと思うのですが、
オバマ大統領が就任した今こそ、
日本の子どもたちにも知ってもらいたい事実です。
これからも鈴木出版をよろしくお願いいたします。
投稿: いのうえともえ | 2009.01.21 11:22