13の理由
『13の理由』
ジェイ・アッシャー
武富博子訳
講談社
ISBN978-4-06-215322-5
定価 本体1600円(税別)
テープが送られてきた。それも7本。
差出人はわからない。
聞いてみると、流れてきた声は2週間前に錠剤ひとつかみのみこんだ、ハンナ・ベーカーの声だった。
彼女はこういう。
心の準備はいい? これから、わたしの人生について話します。もっと正確に言うと、どうしてわたしの人生が終わったのかっていう話。このテープを聴いているあなたは、その理由のひとつです。
テープを聞いているクレイのみならず、読者、この場合は私なのだが、覚悟をさせられる気分になる。この本を読むことは、ひとりの人生に関わることなんだ――と。
賢く美しいハンナの言葉は、自分の人生を終わらせるにいたる経緯を、誰がどのように事態を転がしていったのかを、ゆっくりとじわりじわりと語る。その語り口は、非常にサスペンスに満ちていて、ハンナの気持ちを知りたいという欲求と共に、いや知らなくてもいいのでは、とも思わせる。次に何が起こるのだろうというハラハラさとは別の種類の緊張感が常にはらんでいて、ページを繰るのが怖かった。
ナイーブな感性に、繊細すぎるのではと感じたことは正直あった。だがそれは、私がもう大人になったからだ。高校3年生の女子(男子でも)に、余裕などないのが、この年代なのではないか。自分の価値観と周りとの折り合いなど、つくはずもないこの時期。だからこそ危うく、生きながらえるのに苦労する。
テープはまわる。
ハンナにとって、2週間前につながる2年前の話から、ひとり、またひとりと、テープに個人の名前がきざまれていく。
声が聞こえるわけでもないのに、ハンナが別の個人名をあげるたびに、読み手の私はびくんとした。どんな風に人とつながっているのか、すべての人とのつながりを覚えていることは可能なのだろうか。
追いつめられていくように聞き入るクレイに、自分も重なっていく怖さ。
ハンナは決して声高に誰かを責めていない。
苦しみを垂れ流してもいない。
ただ、最初にテープに吹き込んだように、人生について話している。
半分読んでも、ハンナの声はもちろん続き、読み進めるのが怖かった。
けれど、後半にいくにつれ、少し違う空気がみえだし、最後の言葉に染みた。
それは決してセンチメンタルなものではなく、感情過多のものではなく。
結局はそれはハンナの願いでもあったのではないだろうか。
そう思えるラストだった。
そのお気持ちよくわかります。
最初の方はとくに神経逆立ってくるというか、冷水あびているというか、なんともいえない気持ちになりました。
返却するお気持ち、とっても理解できます。
この話は最後まで読まないと、その気持ちを払拭できないんですよね。かといって、決してムリに読まなくていいと思います。気になった本は、いつか必ず「読み時」がやってきますから
投稿: さかな | 2009.06.04 14:50
図書館で借りて読み始め、ああ、あかんわ といったん閉じ、すこし時間をおいて読み、でもやっぱり耐えられなくなって、昨日(何かひっかかりながらも)返却しました。
そういえば、さかなさんがこの本について書いてはった、と思い出してここを読みました。
>けれど、後半にいくにつれ、少し違う空気がみえだし、最後の言葉に染みた。
そうでしたか〜 もうちょっと先まで読めばよかったかな。いや、やっぱり「今」は無理だったのかも。
この息詰まる感じは、おなじ年頃の子どもを持つ「母」の眼で見てしまうからかなあ。
また時間をおいて読んでみます。
投稿: baku | 2009.06.04 10:01