天井に星の輝く
概要と部分訳を読ませていただいてから2年。
美しい装丁の、一冊の本になりました。
スウェーデンのリアリズムYA。
『天井に星の輝く』は13歳のイェンナという少女が主人公。母との二人暮らしは、イェンナにとって居心地のよいものではない。隠したいことがあり、隠したい自分にも嫌気がさし、毎日が楽しいというものからは、ちょっと距離のある日々。
おぎゃあと生まれた小さな赤ちゃんが成長して、思春期に入る。なにもかも親に依存していた時は案外に短いのかもしれない。あの小さな子どもがいまやオトナになるステージを歩む、それが13歳。
13歳という年齢は実にやっかいだ。個人差はあるけれど、児童文学において、よく描かれる“キー”となる年代でもある、この時期。過ぎ去ってしまったいま、思い返しても、やはり、やっかいとしかいいようがない。
イェンナはいい子であることを拒否している。いい子でいたい、とも思う、願っている。けれど、そうすることはむつかしい。
イェンナはもう、つま先立って歩いたりはしない。あたたかいおかゆのまわりをうろつく猫のように、こそこそしたりもしない。いいたいことを遠回しにいうのもやめだ。気持ちが爆発するのを、イェンナはとめようとはしなかった。言葉が、ただふき出してくる。イェンナは火山だった。その言葉は焼けるように熱く、とめることなどできない。
火山のようになるのが楽になることではないのに、それでも、そうせずにはいられない。痛いほどのリアルさが伝わってくる。イェンナの率直な言動は、時に逸脱しすぎると思えるだろうか。私には、思い当たることだらけで、共感という言葉があてはまらないほどだった。
本書は、デビュー作でアウグスト賞を受賞。映画化もされていて、ベルリン映画祭の14歳以上向けの作品部門にも出品された。残念ながら賞は逃したけれど、ぜひ日本での公開を望みたい。
映画の公式サイト[Link]
最後に、翻訳者のあとがきより
若者の言葉づかいを多用しながら、大事な場面は散文詩のようにつづるなど、さまざまな手法を用いながら、作品全体がもう一文字も動かせないところまで研ぎ澄まされています。そして、それによって最後に残るメッセージは、生きることへの希望です。
ぱせりさん
もったいないようなコメント、ありがとうございます。
YAといっても、各国さまざまなカラーがあり、スェーデンの空気も、新鮮に読みました。ぜひぜひ読まれたら感想お聞かせくださいね。
私も読みたい本はずっっっとなくならないです(笑)。あれもこれもと思っていて、読みたい本が手元にきた時こそ、しあわせを感じます。ふふふ。
『極北で』もいいですよー。冷たさとあたたかさ、その両極を感じる小説でした。
投稿: さかな | 2009.03.06 12:27
さかなさん、おはようございます。
この本も、それから、もうちょっと前にご紹介があった「極北で」も、ぜひ読んでみたいと思っています。
でも、まだ出たばかりの本なのですね。図書館に入っていなくて・・・待ち遠しくて待ち遠しくてたまりません。
さかなさんご紹介の本は、今までどれも失敗なしのおもしろさでしたので、楽しみですが、なかなか手許にこないと(なかには出版前のもありませんか?笑)お預けを食わされたみたいな気分になります。さかなさんのレビューの下に「つづく」とか「以下次号」とか書いてありそうな気がしています。
いつもすてきな本のご紹介ありがとうございます。読みたい本がなくならない幸せを感じています。
投稿: ぱせり | 2009.03.06 08:12