クグノタカラバコ
クグノタカラバコ。
この言葉をはじめてきいた人たちは、たいてい、おでこにしわをよせます。それから、首をすこしかたむけて、ぶつぶつ、つぶやきはじめるのです。
こんな風にはじまる物語。どんな宝箱なんだろうと、あっというまにページにすいつけられます。小さい頃から、自分の宝物を集めていたクグは大人になってから大きな部屋がひとつだけある家をたてました。そこにガラスの戸棚を並べて宝物を飾りました、そう、博物館のように。この博物館に行くにはコツがあります。それは道に迷うことなんです。ここへの生き方には「道にまよって約5分」と書かれているので、人によってはたどりつけない場合もあるようです。
まよってつく博物館、いったいどんなモノが置いてあるのでしょう。どんどん先を知りたくなります。クグのところにあるモノは、それぞれに物語があり、クグはひとつひとつ語ってくれます。
先を知りたいのだけど、ゆっくり読みたい、クグの語るモノのお話はそんな気持ちにさせます。3つのお話が、ゆっくり楽しく静かに語られて、読み終わったと、森林浴でもしてきたかのような、とてもさわやかな気持ちになりました。
いとうひろしさんによる、この物語はもちろん子どものための童話というジャンルになると思うのですが、大人にとっては哲学のようなものも感じられる楽しくて味わいぶかいものがありました。刊行されてすぐ読んでいたのですが、このなんともいえない、うれしくしあわせな気持ちをどう書いていいのだろうと思っていました。こうして「哲学のようなもの」と書きましたが、気づいたのはいつも楽しみに読ませていただいている「えるふ通信」[blog 記事Link]さんの感想からでした。深呼吸したくなるような時、青い空をみたい時、大人にとっても心地よい読書がまっている本です。わが家の子どもたちも、ほんとにそんなサンドイッチあるかな、カガリビワニって本当にいる?とおもしろそうに聞いていました。夏休み、親子におすすめな一冊です。
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