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2009.11.12

リキシャ★ガール

リキシャ★ガール (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)
リキシャ★ガール (鈴木出版の海外児童文学―この地球を生きる子どもたち)
ミタリ・パーキンス作 ジェイミー・ホーガン絵 永瀬比奈訳 鈴木出版
ISBN 978-4-7902-3224-7 本体1400円

 主人公の少女ナイマは、バングラデシュの伝統的絵画アルポナを描いたら村では右に出るものがいないといわれています。
 祝日には家の前の敷石や小道にアルポナを描きます。国じゅうでベンガル語の美しさを祝う「国際母語の日」に一番上手にアルポナを描いた女の子には賞が贈られることになっているそうです。
 ナイマは妹、お母さん、お父さんの4人家族です。お父さんはリキシャにお客さんを乗せて運ぶ仕事をしています。新しいリキシャを買い、もっとお客さんを増やそうしているところですが、たくさんの借金をしてリキシャを買ったため、お父さんは日中ろくに休むことなく仕事をしなくてはいけませんでした。ナイマは思います。私が男の子だったらお父さんのかわりにリキシャをひけるのに、と。しかし女の子がそんなことをすると家族に恥をかかせることになるのです、村はそういうところでした。ナイマはお金にならない絵を描くことがつらくなっていきます……。

 113ページの短いお話です。余白もたっぷりとってあるページはとても読みやすく、挿絵も物語の雰囲気をよく伝えています。ナルマがお父さんを助けたいばかりにとる行動はハラハラするもので、読んでいて思わず目をつむってしまったほど。けれど、行動を起こすことによって、いままでとは知らない世界、人との出会いもあるのです。物語にはバングラデシュの女性の希望の光をもたらしたマイクロファイナンスで自立しようとしている女性が登場し、ナイマに影響を与えます。マイクロファイナンス、2006年グラミン銀行のムハマド・ユヌス総裁にノーベル平和賞が贈られて注目を集めたことを覚えているでしょうか。「小口の融資をおこない、それを元にしてお金をかせぐための基金です」と作者あとがきで説明しています。

 貧しい生活の中でできることを見つけようとする少女の気持ち、絵を描くのが大好きだという気持ち、10歳の女の子、ナルマの心が丁寧にすくいとられるとともに、女性のこれからの生き方についての広がりを感じさせます。もちろんすぐにできるかといえば、それはとても難しいということも。

 鈴木出版の海外児童文学シリーズも一冊でるごとに厚みのあるシリーズになってきています。小学校の中学年くらいから十分読めるつくりになっているのもうれしく、またどの本も挿絵がきれいで読む楽しさがあります。

 ところで、絵を描くのが好きな少女のお話をいくつか思い出しました。タイの村のお話を描いた絵本『かさの女王さま』(シリン・イム・ブリッジズ作/ユ・テウン絵/松井るり子訳/セーラー出版)の絵本、同じく鈴木出版から出ている『シルクの花』(キャロリン・マースデン作/代田亜香子訳)です。この2冊もおすすめです。

かさの女王さま シルクの花 (この地球を生きる子どもたち)

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