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2014.11.23

若い寡婦たちには果物をただで(2)

高校生ボーズ、連休帰省中。

この本のプレゼンをするといっていたので終わったのか聞いてみたら、ちょうど終わったばかりとのこと。原稿などをみながらではなく、ほぼ、聴衆にむかって問いかけたのがよかったのか、同点1位のクラス票を得たと満足していました。

ちなみに、同点1位の子のテーマは「スマホアプリについて」。これもおもしろそうです。

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発表原稿
あいさつ(こんにちは)

僕は『アンネ・フランクについて語るときに僕たちが語ること』という本の紹介をします。この本の題からして少し重い話なのですが真剣に聞いてもらえたらなと思います。
(スライドショーにそって話を進める)

(「若い寡婦たちには果物をただで」のところを少し細かく話す)

→ここの話を細かく話したいと思います。

・・・その夜に一家と夕飯を食べているとテンドラーが小便をしたくなる。だが、こうしてもうひとりの母親と一緒にいて、あまり動きたくなかった。彼は台所のにおいを嗅いでいようと、近いところにいようと、台所の窓のすぐ下にたったのだ。そして用を足した。せせらぎの音の向こうで、乳母が嘆いているのが聞こえた。彼は乳母がしゃべっていることを聞き取ろうとした。すると聞こえた。「みんなで食事をする」と乳母はいった。「みんなでお祝いする。そして、あいつが寝たら、あいつを殺すんだ」息子の一人の彼女は命じた。「行きなさい。父さんにナイフを研いでおくように言うんだよ」もう一人にはこういった。「あんたは早く寝なさい、そして早起きする。でね、あんたがあの雌牛の最初の乳首を掴むまえに、あいつの喉を切り裂いておくんだよ。あたしたちのものなんだ。あたしたちのものを、取られてたまるか」テンドラーは走った。逃げるのではなく夕食の席に。そしてその夜みんなが寝静まった頃テンドラーはむくりと起き持っていた拳銃で一家の一人一人を殺した。それぞれの兄弟に一発ずつ、父親に一発、母親に一発。最後の弾丸は一歳半の赤ん坊に。

最後にみんなに質問したいと思います。この話をきいてテンドラー教授がとった行動は正当なものだと思いますか? みなさんだったらどうしていましたか?

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シーンと集中してきいてもらえたそうです。
この最後の質問に5人くらいのクラスメートがこたえたのは、すべて、物語でエトガーがこの話を聞いてこたえたことと同じだったそうです。逃げればよかったのでは。

私自身この短篇を何度か読み返し、読み返すたびに、
エトガーの父親シミーの言葉が残ります。

「だけどなあ、息子よ、誰が死ぬべきか決めるだなんて、俺たちはいったい何様だよ?」

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コメント

ありがとうございます。

本人も聞いてもらっているという実感を得てとてもうれしかったようです。本も貸して貸してと何人ものクラスメートからいわれ、先生からも、準備中から気になっていたと言葉をかけられたそうです。

本当に作品の力ですね。いい作品を訳してくださり本当にありがとうございます。

こんな紹介をしていただいて、ほんとうに嬉しいです! 作品になりかわり、御礼申し上げます!
「スマホアプリについて」という、高校生なら誰もが興味を持ちそうなテーマと同点だっただなんて、いかに「耳を傾けさせる」力が強かったか、ということですね。さすが、さかなさんとお連れ合いさまの息子さん、言葉の磁力がきちんと培われているのだと思います。
最後の言葉、私もなにかにつけてよく思い出します。

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